/

トルコ、ロシアと険悪 シリア内戦巡り 難民流入懸念

【イスタンブール=木寺もも子】シリア内戦の収束に向け協調してきたトルコとロシアの関係にきしみが目立ち始めた。ロシアが支援するシリアのアサド政権軍は反体制派の最後の主要拠点、北西部イドリブ県で大規模攻勢をかけ、反体制派の一部を支えてきたトルコが窮地に追い込まれているためだ。トルコとロシアは協議を続けるが、妥協点を見いだすのは容易ではない。

トルコは隣国シリアから再び多数の難民がトルコに流入し、同国経済に打撃を与える事態も懸念している。トルコはすでにシリアから約360万人の難民を受け入れており、米国との緊張を背景にした通貨リラ安で低迷する経済の重荷の一つになっている。リラはトルコ軍とアサド政権軍が直接交戦した3日以降、対ドルで1%超下落した。トルコの有権者はエルドアン政権への不満を募らせている。

トルコのチャブシオール外相は訪問先のドイツ・ミュンヘンで16日に開いた記者会見で、15日の同市での外相会談でロシア側に即時停戦を迫ったと語った。チャブシオール氏は「イドリブでの(アサド政権軍の)進攻を停止させ、恒久的な停戦を達成しなければならない」と指摘した。17日にはトルコの代表団がモスクワを訪問する予定だと明かしたが、ロシア側との隔たりは大きい。

2011年に始まったシリア内戦は、ロシア軍の支援を受けたアサド政権軍が優勢に転じ、反体制派の多くをイドリブ県とその周辺に追い詰めている。2月にはロシア軍が空爆した地点にアサド政権軍が陸上から進攻するという形で制圧作戦を強化している。その過程で過去の合意に基づく「停戦監視」を名目に同県に駐留するトルコ軍と衝突した。

トルコ国防省によると、この2週間でトルコ軍の少なくとも13人がイドリブ県でアサド政権軍に殺害された。現地からの報道によると、トルコ軍は報復としてアサド政権軍の計200人超を「無力化」した。

トルコのエルドアン大統領はアサド政権軍に対し、18年の「ソチ合意」でイドリブ県一帯に設けた非武装地帯の外側まで月内に退くよう求めていた。だが15日の与党会合では、それより前の時点でもアサド政権軍に本格的な軍事作戦を仕掛ける可能性を示唆した。トルコ軍は部隊を相次ぎシリア側に越境させている。

ロシアやアサド政権はイドリブ県での作戦の目的を「テロリストの掃討」だと指摘する。トルコが約束したイドリブ県からの過激派排除を実行していないというのがロシア側の主張だ。一方、トルコ側はロシアやアサド政権軍の同県進攻が停戦合意違反だと主張する。

トルコ軍が15年11月、シリア国境付近でロシア軍機を撃墜すると、ロシアは農産物の輸入禁止などの経済制裁をトルコに科した。エルドアン氏が謝罪すると制裁は解かれた。トルコはロシアを仮想敵とする北大西洋条約機構(NATO)の一員なのにロシア製の地対空ミサイルを導入した。

NATOを率いる米国の議会はこれに強く反発し、対トルコ制裁を求めるが、トランプ米大統領が発動を猶予している。トランプ氏は15日、エルドアン氏とシリア情勢を巡り電話で協議し、トルコ軍の自制を評価した。

トルコはロシア、米国の双方と微妙な距離を維持する。だが、アサド政権軍と全面衝突する事態に陥れば、外交・安全保障のバランスは崩れ、難民流入や新たな制裁の発動という形で経済再建が遅れるリスクもある。

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン