書斎のゴルフ

フォローする

トム・モリス 「ファー&シュア」でナイスショット(下)

(1/2ページ)
2020/3/5 3:00
保存
共有
印刷
その他
19世紀半ばに英セントアンドルーズに生まれ育ったトム・モリス。息子のトム・モリス・ジュニアはゴルフの全英オープンに4連勝してチャンピオンベルトを永遠に獲得したことで知られているが、父のオールド・トム・モリスはこの世界最古のトーナメントである全英オープンの開催に尽力し、自身も4勝を挙げ、最後の優勝はいまだに破られていない最年長記録である46歳のときだった。しかもオールド・トムはギアメーカーであり、コースデザインも行い、グリーンキーパーとしても大変な功績を残しているスーパーゴルファーだった。そんなオールド・トムのゴルフの基本を練習にも取り入れよう。(日本経済新聞出版社「書斎のゴルフ VOL.45」から)

19世紀のスコットランドでは、ゴルフは紳士だけのものでなく、淑女も楽しんだ。あごひげのトム(中央下)はパイプをくゆらせながら、そうした紳士淑女にゴルフレッスンを行った

19世紀のスコットランドでは、ゴルフは紳士だけのものでなく、淑女も楽しんだ。あごひげのトム(中央下)はパイプをくゆらせながら、そうした紳士淑女にゴルフレッスンを行った

プレストウィックGCにトム・モリスを招いたコロネル・フェアリーは、このコースの実質のオーナーであるアール・エリントン卿と、世界一のゴルファーを決めるチャンピオンシップをこのコースで行うことを画策する。

それまでは各クラブのプロが勝手に試合を組んでいたわけで、プロが一堂に会する大会はなかった。誰もが一番うまいゴルファーは誰なのか、知りたがった。故にそのトーナメントは「ジ・オープン」と名づけられた。全英オープンの誕生である。

エリントン卿は、モロッコ製の赤い革と銀のバックルのついたチャンピオンベルトを優勝者に進呈することにした。そのベルトは優勝者が次の年まで保有できる権利を持ち、3年連続で勝てば永久に所持できる。試合は12ホールのプレストウィックを3日間回って、計36ホールのストロークプレーで争われることになった。

第1回大会は1860年に開催された。大会を催す意図が各クラブにうまく伝わらず、集まったプロはわずか8人だったが、トムの他にルックことボブ・アンドリュー、売り出し中の若手であるウィリー・パークなど実力者がそろった。

歴史的な第1打は、ホームコースプロであるトムが放った。しかし打つ瞬間に突風が吹いて砂が目に入り、打球は狙いから外れた。この日はそのショットを象徴するようなラウンドだった。トムは3日間とも粘り強く戦ったが、パークの強打と正確なアプローチショットの前に1打及ばなかった。

しかし翌年の第2回は見事に雪辱を果たし、トムは前年のパークより11打もスコアを縮めて初優勝を遂げたのである。夢に何度も描いたように、暖炉の飾り棚にチャンピオンベルトを置くことができた。そして、その翌年も優勝を成し遂げたのである。

正確にリズム刻む「時計スイング」

トムのスイングは「クロックワーク・スイング」と呼ばれた。つまり「時計スイング」である。「チック、タック」というリズムが正確に刻まれ、きれいな円が描かれた。このスイングをフェザリーボール時代の「オールド・セントアンドルーズ・スイング」と呼ぶ人もいたが、とにかく真っすぐ狙い所に飛んだのだ。

ただし、真っすぐ飛んだが、あまり飛ばなかったといわれていた。だがそれはトムの少年時代の頃のフェアウエーがあまりにも狭かったからで、思い切り振ることをしなかったからである。

実際、飛ばし屋のパークが出現して、パワーがなければ勝てないとわかってからは、好きだったパイプたばこをやめて肉体を鍛え、パークよりも飛ばしていたことが明らかになっている。

「チック、タック」。この言葉と響きに僕は何ともいえない郷愁を感じる。セントアンドルーズのオールドコースでラウンドしたとき、この言葉を心の中で唱えながらスイングした。スイングする前から「チック、タック、チック、タック……」と。すると心が落ち着いてナイスショットができた。

清元登子プロが教え子の不動裕理プロや古閑美保プロにメトロノームが刻む音を聞かせながらスイングをさせたというが、まさにそれと同じだと思った。190年以上も前にトムがしていたとは。永遠不滅のレッスンだったのだ。

フェアウエーウッドの名手だったトム。ロングノーズのウッドヘッドでうまくグリーンをとらえた

フェアウエーウッドの名手だったトム。ロングノーズのウッドヘッドでうまくグリーンをとらえた

また、トムは素振りをするときに「ファー&シュア」と唱えていた。「ファー&シュア」、つまり「遠くに、そして正確に」というのはゴルファーなら誰もが知る大昔からの理想のショットである。この言葉をトムはスイングするときに唱えていた。

「ファー」でバックスイングして、「シュア」で打つ。「アンド」はトップでの切り返しである。トムはこれを息子のトミーこと、トム・モリス・ジュニアにも教えていた。

「本日最初のティーショットを打つときは、特に素振りでこれを唱えるといい。バックスイングがゆっくりになるからだ」

息子のトミーはトムのこのアドバイスにこう言っている。

「ダッド、短く『ファー・ン・ショー』でいい。『ン』で切り返すんだよね」

このことを最近知った僕は、これを自分のスイングに取り入れた。素振りだけでなく、本当にボールを打つときにも「ファー&シュア」と唱えるのだ。すると、リズムがよくなってこれまたナイスショットになる。しかも、この言葉を唱えると気分がすこぶるよくなるのである。

昔からある言葉を唱えて打つ喜び。セントアンドルーズで、羊飼いがウサギの穴に小石を入れたのがゴルフの始まりといわれるが、この「ファー&シュア」には長きにわたる歴史あるスポーツ故の響きが漂うのである。

  • 1
  • 2
  • 次へ
保存
共有
印刷
その他

ゴルフのコラム

スコアアップヘ

電子版トップスポーツトップ

書斎のゴルフ 一覧

フォローする

中部銀次郎さんがのこした言葉は、ゴルフの神髄を表している。深く心に残り、ゴルフの奥深さを味わわせてくれる。もちろん、上達への大きなキーワードでもある。そして、それはビジネスにも通じ、普段の生活にも役立 …続き (6/8)

中部銀次郎さんがのこした言葉は、ゴルフの神髄を表している。深く心に残り、ゴルフの奥深さを味わわせてくれる。もちろん、上達への大きなキーワードでもある。そして、それはビジネスにも通じ、普段の生活にも役立 …続き (6/4)

カラーからのパットは芝に食われる分を足し、先に距離を計算する

「ロジカルゴルフ」第2弾となる「ロジカルゴルフ 実戦ノート」(日経プレミアシリーズ)が大好評の尾林弘太郎プロ。第1弾の前作「ロジカルゴルフ スコアアップの方程式」も大ヒットしたが、いずれも尾林プロが延 …続き (5/28)

ハイライト・スポーツ

会員権相場情報

[PR]