シリア、人道危機深まる 政権猛攻で最多の避難者
【カイロ=共同】シリア内戦で人道危機が深まっている。アサド政権軍が反体制派の最終拠点、北西部イドリブ県に猛攻をかけ始めた昨年12月以降、氷点下まで冷え込む寒さの中、県人口約300万人のうち約70万人が住居を追われた。一定期間の避難者数としては約9年続く内戦で「最悪」(国連)の事態だ。
「18時間も路上にいる」。2歳と2カ月の娘2人を連れ、徒歩で避難中の女性ジュディ・ハラビーさん(32)が12日、メッセージアプリを通じ取材に応じ、悲惨な現状を訴えた。雪が舞う上空を軍用機が飛び交い、砲撃音も響く。「逃げるしかなかった」
イドリブ県で攻勢を強めるアサド政権軍に対し、反体制派を支援するトルコのエルドアン大統領は2月中に県からの撤退を要求。応じなければ実力行使すると警告し、内戦が国家間の全面衝突に発展する恐れが増している。
シリア人権監視団(英国)によると、戦闘が特に激化した1月下旬以降、アサド政権軍の兵士と反体制派の戦闘員ら計千人以上が死亡した。
ハラビーさんは激戦地だった北部アレッポから2016年にイドリブ県に逃れた。今回は、アレッポ郊外の親族宅に向かう再避難となり「(政権軍の進攻は)犯罪行為だ」と憤った。
トルコ国境につながる道には、荷物を積み込んだ車が長い列をつくっている。だが、トルコは既に約370万人のシリア難民を受け入れており、新たな流入は「不可能」(与党幹部)との立場だ。
母親(70)と4人の子ども、妻と一緒に国境付近まで逃げてきた男性マゼン・ムーサさん(34)によると、避難民キャンプは人であふれ返り、行き場がない。「とても寒い。金も食料も尽きかけている。入国を許してもらえなければ生きていけない」と訴えた。