横浜のIR、反発根強く 冷静な議論欠かせず
潜望展望

2020/2/17 2:00
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横浜市がカジノを含む統合型リゾート(IR)の誘致を表明してまもなく半年となる。反対論が根強い一方、老いる都市の財政は硬直化が避けられない。市は市民向け説明会を開いているが、汚職事件によるイメージ悪化もあり、市民の理解が進んでいるとは言い難い。市の将来を見据えた冷静な議論が欠かせない。

1月9日午後、横浜市磯子区でアスファルトの隙間から水が噴き出した。古い水道管が破裂し、3万戸が断水・濁水に見舞われた。水道局は古い水道管の交換を進めるが「予算などの制約で年110キロメートルの交換計画をさらに増やすのは難しい」(同局)。水道管だけでなく、道路や学校なども老朽化が目立ってきた。

翌10日の横浜市応接室。高齢者を対象とした市営バスなどを低額で乗り放題とする「敬老特別乗車証」に関する審議会で、山崎泰彦会長(県立保健福祉大名誉教授)は市に「利用者や市の負担増はやむなし」と告げた。

事業者は展示会でカジノに言及せず、IRの議論が深まっていない(1月、横浜市)

事業者は展示会でカジノに言及せず、IRの議論が深まっていない(1月、横浜市)

少子高齢化やインフラの老朽化は財政をむしばみ、市の試算では2023年度をピークに個人市民税、27年度をピークに市税収入全体が減少に転じる。「扶助費をはじめとした義務的経費が膨らんできている。年々厳しい状況になっている」(財政局)。

悪化する財政を支える一つの解として浮上したのがIR誘致だ。市が想定する自治体の増収効果は年間820億~1200億円で、20年度の法人市民税見込み額(475億円)を上回る。林文子市長は「財政の硬直化を防ぐにはいろいろな方法で税収を上げ、還元させ循環させること。その一つとしてIRを取り入れる」と強調する。

ただ、横浜での参入を目指す事業者らはカジノ部門の言及を避け、反対する市民らとの冷静な議論は深まっていない。市のIR説明会に出席するのは大多数が60歳代以上。将来の財政負担を強いられる20~30歳代以下の参加者は少数だ。

IRの横浜誘致に反対しているある市議は「カジノがなくても今の横浜は魅力的だ」と強調する。一方で現状維持でよしとする姿勢を批判する声もある。横浜・元町のある経営者は「横浜は過去の資産を食い潰しているだけだ」と将来の横浜の存在感低下を危惧する。

IRがバラ色の解決策との見方は少ない。市IR推進室も「課題のある事業だとは承知しているが、IR誘致は自治体として本気で将来を真剣に考えた結果だ」とするが、多くの市民に伝わっていないのが現状だ。

多くの人がイメージする「横浜ブランド」とも言える異国情緒あふれる街並みは幕府が開港地とした「外圧」の副産物。横浜が急成長したのはその副産物を取り込んだ結果で、造船所を埋め立てた「みなとみらい21」も、現状打破を目指した挑戦の結果だ。

横浜市は内陸部に高齢化が加速するベッドタウンを抱える。財政が厳しさを増すなか、どうしなやかに立ち回るか。IRをその解とするかは、市民を含めた横浜市全体に問われている。

(牛山知也)

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