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19年の食肉輸入、シェア変動 米豪が縮小、伸びるカナダ

環太平洋経済連携協定(TPP)や日欧経済連携協定(EPA)の発効から約一年。輸入食肉で輸入量やシェアで変動が起きている。牛肉・豚肉とも輸入量は増えたが、牛肉は輸入大国のオーストラリアと米国が前年割れ。豚肉でも、輸入量首位の米国が主要輸入国の中で唯一前年を下回った。一方、貿易協定で関税が下がったカナダやメキシコは代替調達先として伸びた。

TPP発効を受けてカナダ産牛肉の輸入が増えた

「豪州産牛肉は中国に買い負けている」。商社の担当者はため息をつく。豪州は日本の牛肉輸入量の半分を占める大国だったが、2019年は勢いを欠いている。

貿易統計によると、19年の牛肉輸入量は61万5390トンと前年同期よりも1.3%増えた。だが、牛肉輸入の約9割程度を占める豪州と米国からの輸入は鈍った。豪州産牛肉は29万3501トンと同5.8%マイナス。米国産牛肉は24万1050トンと同2.6%減った。豪州と米国を合わせた牛肉輸入量シェアも19年が86.9%と18年(92%)から5.2ポイント縮小した。

豪州の減少の一因には中国需要の急増がある。同国では食の洋風化や所得向上に伴って牛肉消費が増えている。そこにアフリカ豚熱(ASF)の感染拡大による調達増が重なった。

中国での需要増を背景に価格も上昇した。ハンバーガーのパティなど業務用として使われることの多い豪州産牛肉(冷凍、カウミート)の卸売価格は前年よりも4割ほど高い。割高感も豪州のシェア低下につながった。 米国はTPPからの離脱が痛手となった。TPP発効により、現在の牛肉輸入関税は38.5%から26.6%まで下がっている。米国に代わって存在感が増したのがカナダだ。カナダの輸入量は4万2900トンと前年比約2倍となった。総合商社の担当者は「穀物肥育で品質の良いカナダは代替産地として白羽の矢が立った」と話す。

カナダ産牛肉の価格は米国とほぼ同水準で「日米貿易協定が発効するまで、関税分だけ米国よりも安かった」(商社)という。「味が良い」といった理由からステーキ店などでの採用も増えた。あるステーキチェーンでは昨年からカナダ産牛肉のステーキを定番化。米国産のステーキよりも3割程安い価格で提供している。

豚肉でも変化が現れている。19年の豚肉輸入量は95万8963トンと前年比3.7%増えた。食肉メーカーなどはASFの感染拡大による豚肉価格高騰に備えて欧州やカナダからの輸入を増やした。日欧EPAで関税が下がったことも追い風となった。実際にカナダは同4.6%増、スペインは同9.8%増となっている。

各国からの輸入量が前年を上回るなか、米国は同5.2%減と主要国の中で唯一の前年割れとなった。米国の19年の輸入量シェアは29.5%と18年よりも2.4ポイント縮小。TPPを離脱した影響は大きく、商社の担当者からは「米国の一人負け状態だ」という見方が強い。

20年の食肉市場には不確定要因が多い。1月に日米貿易協定が発効し、牛肉や豚肉の関税が引き下げられ、米国はシェア再拡大の素地を得た。一方、米中の貿易摩擦は両国が「第1段階の合意」に署名するなど歩み寄ったことで両国関係は緊張緩和に向かいつつある。中国が米国からの調達を拡大すれば相場が上昇し、米国の価格競争力が低下する可能性もある。

足元では新型コロナウイルスの感染が拡大。中国国内の消費は不透明だ。商社の担当者は「20年は不確定要素が多く難しい一年になりそう。一歩読み間違えれば大損する」と警戒する。(嶋田航斗)

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