公立夜間中学、進まぬ設置 背景に教育現場の多忙も

2020/2/14 11:00
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外国籍の子どもや不登校で義務教育を終えた人の受け皿として期待される、公立夜間中学の設置が進まない。自治体に設置を促す教育機会確保法が完全施行されてから、2月で3年。施行後の新規開校は埼玉県川口市と千葉県松戸市のみだ。総数は東京・大阪圏を中心に9都府県33校にとどまる。背景には、現場の多忙があるようだ。

自主夜間中学で、高齢の生徒らに話しかける城之内庸仁さん(右、岡山市)=共同

「いじめなどへの対応で、教育委員会に余裕がない」。岡山市立中の英語教師で、地元に公立夜間中学をつくろうと運動する城之内庸仁さん(43)はため息をつく。

東日本大震災の支援活動を通じ、有志による福島市の夜間中学を知り、自身も3年前に岡山市で同様の取り組みを始めた。役所や企業を定年退職した人々がボランティアで先生を務める。地域で働く外国人ら約200人が学び、島根県からも70代の日本人女性が通う。寄付を軸にした善意頼みの自主運営は厳しい。

岡山市教委は設置に慎重だ。担当者は「継続して通える人は数人程度と判断している。業務は多岐にわたり、一つ学校をつくるのは簡単ではない」と話す。

開校への検討を始めた香川県も、事情は同じ。「学習指導要領の改訂に、主体性を促すアクティブラーニングの取り組み……。国の施策への対応で各市町はいっぱいいっぱいだ」(県教委幹部)

文部科学省の調査によれば、小中学校に通っていない可能性のある外国籍の子どもが、昨年5月時点で2万人近くいたとみられる。日本人の不登校の小中学生は増え続け、2018年度に16万4千人超となった。

今年1月末時点で公立夜間中学の具体的な設置構想があるのは、4月の開校を控える茨城県常総市をはじめ、札幌市や静岡県、福岡県大牟田市など8県市。他に約30自治体が、開校へ向けた検討を始めたという。

人口に占める外国人比率が上がり続けていることを踏まえ、昨年4月に設置した川口市教委の担当者は「市長のリーダーシップがなければ実現しなかった」と振り返る。

「各教委の忙しさは認識しているが、困難を抱えた人が多様性のある夜間中学で学ぶことが、社会性を育む上で大切」と、文科省の田中義恭・教育制度改革室長は意義を説く。同省は今後、設置する自治体への補助金を増やして後押しする方針だ。〔共同〕

▼夜間中学 貧困や差別を理由に通学できなかった人が仕事の合間に学ぶ場として、敗戦後の混乱期に誕生した。全国夜間中学校研究会によると、ピーク時の1950年代半ばには公立で全国に89校あり、5千人余りが在籍。経済成長を背景に、60年代後半に20校まで減った。不登校の人や外国人労働者の増加で需要が再び高まり、文部科学省は各都道府県と政令指定都市に公立での1校以上の設置を促している。自主夜間中学と呼ばれる民間レベルの取り組みもある。
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