新型肺炎、水面下で拡大の恐れ 見えない感染ルート

中国の湖北省武漢市で発生した新型コロナウイルスによる肺炎で、13日に国内初の死者が確認された。他にも中国とのつながりが不明な患者が複数明らかになった。ウイルス検査の網から漏れ、既に水面下で感染が拡大している恐れもある。新たな段階に対応した検査や医療の態勢整備が求められる。
厚生労働省によると、神奈川県の80代女性は1月22日に倦怠(けんたい)感を訴え、2月1日には肺炎の診断を受けて入院した。当初は抗生剤治療を受けており、細菌性の肺炎などを疑われていたとみられる。
だが呼吸の状態が悪化し、6日に別の医療機関に転院。医療機器を使って呼吸を補助する治療が始まった。ウイルス検査の実施は12日で、陽性の結果が出たのは13日の死亡後だった。
横浜沖で検疫中のクルーズ船の乗員乗客を除くと、国内では12日までに29人の感染者が確認されていた。多くは湖北省滞在歴があり、他の人も渡航者や新型肺炎の患者と接点があった。このため厚労省は類推される感染ルートの周辺者の健康観察を続けることでウイルスの封じ込めをしようとしていた。
だが13日発表の感染例では、死亡した女性や義理の息子のタクシー運転手、和歌山県の医師についてこうした感染ルートは類推できていない。都によると、タクシー運転手は新型ウイルスの潜伏期間とされる14日間で「外国人は乗せていない」と話しているという。
今回、感染を確認できたのは、厚労省が医療機関に報告を求める基準を拡大したことが関係している可能性がある。同省は湖北省などの感染地域とつながりがあることを報告条件にしているが、7日には基準に縛られない「柔軟な検査」を求める通知を出していた。
聖路加国際大大学院の遠藤弘良・公衆衛生学研究科長は「水面下で感染が広がっているとしても不思議ではない」と指摘。「現場の負担に配慮しながら、速やかに全国レベルで検査態勢を強化する必要がある」と話す。
感染ルートが見えない事例が続けば封じ込めは困難となり、重症者の治療に重点を置くなど、対策の転換を求められる可能性もある。