エアバス、「敵失」も赤字転落 汚職疑惑や生産遅延で

2020/2/13 22:12
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生産に遅延が発生している(エアバスの独ハンブルク工場)=ロイター

生産に遅延が発生している(エアバスの独ハンブルク工場)=ロイター

【パリ=白石透冴】二大航空機メーカーの一角である欧州エアバスが失速している。13日に発表した2019年12月期決算は、最終損益が13億6200万ユーロ(約1630億円)の赤字だった。赤字転落は10年ぶり。汚職疑惑への罰金支払いに加え、組み立てが複雑な機体の生産遅延も響いた。ライバルの米ボーイングが2度の墜落事故による受注減などに苦しむなか、「敵失」を勢いに変えられていない。

18年12月期の最終損益は30億5400万ユーロの黒字だったが一転、大幅な赤字となった。ギヨム・フォーリ最高経営責任者(CEO)は13日、「20年度は企業文化と業務体制を改善していく」とのコメントを発表した。19年12月期の売上高は前の期比11%増の704億7800万ユーロだった。

最終赤字の主因は汚職疑惑だ。英米仏の3カ国で受けていた捜査について、捜査終結のために支払う罰金で計36億ユーロを計上した。販促のために外部のコンサルタントを使って各国の有力者に金銭を提供していたのではなどとの観測が出ている。 罰金の支払いで事実上、3カ国での捜査は終了したとされる。ただマレーシアの格安航空会社(LCC)大手、エアアジア・グループの幹部が資金援助を受けていたとの疑いも新たに浮上。エアバスのイメージ低下にもつながりそうだ。

19年はエアバスの収益拡大が見込まれた年だった。ボーイングの小型機「737MAX」が2度の事故を起こし、運航や出荷停止に追い込まれた。ボーイングの19年12月期の最終損益は6億3600万ドル(約700億円)の赤字。事故の補償費用の計上などで、22年ぶりの赤字となった。

こうしたなか、エアバスの19年の顧客への引き渡し機数は863機と過去最高を更新し、8年ぶりにボーイングから首位を奪還した。

だが当初予定した880~890機の目標は達成できなかった。理由は独北部ハンブルク工場の生産遅延だ。同工場は米アラバマ工場と並び「A320ファミリー」と呼ばれる小型機A320系の最終組み立てを担うが、受注のスピードに対応できなかった。

フォーリ氏は13日の記者会見で「約6カ月の引き渡し遅延が起きている」と認めた。新型の小型機「A321neo」は内部設計の自由度が高いが、組み立てが複雑になり遅れにつながった。19年は同機を18年比で約6割多い168機生産したが、それでも目標を下回ったもようだ。フォーリ氏は遅延の解消について「約1年半かかりそうだ」と語った。

エアバスは対策として今年1月、仏南部トゥールーズにある工場にも同機の生産ラインを造ると発表した。ただ完成は22年半ばまでになる見通しで、引き渡しが順調に進むまでに時間がかかる可能性がある。

将来の成長を左右する足元の受注数に陰りが出ていることも懸念材料だ。19年の受注は768機で、2年連続で引き渡し機数を下回った。受注数を引き渡し数で割った数値は0.89。ロイター通信によると、世界金融危機後の09年以降で最も低い数値となった。

大型受注が一巡し、受注が伸び悩んでいることが一因だ。華々しい発注で話題を呼んだエミレーツ航空(アラブ首長国連邦)など中東勢が、地域情勢の不安定化や米中貿易戦争の影響で発注を鈍らせている。

中国で発生した新型肺炎の影響で航空便のキャンセルが相次いでおり、20年の受注も伸び悩むとの見方がある。受注残は19年末時点で7482機あり、中期的な経営の安定は確保しているものの、将来の成長を鈍らせる可能性がある。

日本の航空部品市場にも影響が及びかねない。ボーイングが事故の余波で生産水準を落とすなか、リスク回避でエアバス向けに部品供給を増やそうという企業が増えている。エアバスも経済産業省が仲介するイベントなどを通じ、中京圏を中心にサプライヤー開拓を進めてきた経緯がある。

「ボーイングがだめなら」と期待されていたエアバス。今後の機体の開発計画などに影響が出れば、航空関連市場の成長に水を差しそうだ。

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