バイデン氏失速が映す民主の苦悩、漂流「打倒トランプ」

米大統領選
2020/2/13 5:50 (2020/2/13 7:27更新)
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米大統領選の民主党候補指名争いは激しさを増す(左からサンダース氏、ブティジェッジ氏、ウォーレン氏、バイデン氏、クロブシャー氏)=ロイター、AP、ゲッティ=共同

米大統領選の民主党候補指名争いは激しさを増す(左からサンダース氏、ブティジェッジ氏、ウォーレン氏、バイデン氏、クロブシャー氏)=ロイター、AP、ゲッティ=共同


【ワシントン=永沢毅】米大統領選の民主党候補選びは11日、序盤のヤマ場である東部ニューハンプシャー州予備選を終えた。これまでの戦いであらわになったのは「トランプ大統領を倒せる候補」を巡って漂流する穏健派の有権者の姿だ。彼らの間で本命視されてきたはずのバイデン前副大統領(77)の失速は、誰がその適任者なのか惑う民主党の苦悩を映し出す。

「バイデンにしようと思っていたけど、最終的に指名を勝ち取れないと思い直してやめた」。自営業のジェイムソン・ドランさん(47)は11日の予備選で投票先を迷った末にバイデン氏と同じ中道派、クロブシャー上院議員(59)に一票を投じた。決めたのは2日前だった。

AP通信の出口調査によると、クロブシャー氏に投票した有権者の半数超が予備選から数日内に決めた。初戦アイオワ党員集会で5位に終わった同氏は第2戦のニューハンプシャーで3位に食い込み、指名獲得への道筋を残した。

クロブシャー氏を押し上げたのは、左派のサンダース上院議員(78)以外の候補を求める穏健派の民主支持層の不満のマグマがある。初戦でバイデン氏を押しやって穏健派の支持を集めた前インディアナ州サウスベンド市長、ブティジェッジ氏(38)は経験の乏しさがネックとされた。中西部ミネソタ州選出で上院議員を3期務めるクロブシャー氏はその欠点を補完する。

象徴する場面が予備選の4日前に開かれた7日のテレビ討論会にある。「ワシントンたたきは簡単だ。それはあなたを『クールな新星』にみせるが、人々はそれを求めてはいない」。クロブシャー氏はブティジェッジ氏をこうたしなめた。

ブティジェッジ氏は1月末の集会で、トランプ大統領の上院での弾劾裁判を「テレビをきってアニメでもみたい」とやゆした。党派対立が深まるワシントン政治の「アウトサイダー」を意識した発言だったが、裁判に出席しなければいけないクロブシャー氏やサンダース、ウォーレン両上院議員(70)はアイオワでの選挙活動に支障を来していた。

クロブシャー氏の指摘は、ブティジェッジ氏の若さゆえの経験の乏しさや現実の政治に向き合わない姿勢、責任感の欠如を印象づけた可能性がある。バイデン氏では物足りないが、果たしてブティジェッジ氏で大丈夫なのか。初戦と第2戦のはざまにあった微妙な出来事が、こんな不安を感じた一部の穏健派の支持層をクロブシャー氏に引き寄せた。

苦戦が続くバイデン氏の陣営は「1992年のクリントンモデルをめざす」と挽回を期す。同年の民主候補選びでビル・クリントン氏は初戦のアイオワで惨敗した。次のニューハンプシャーで僅差の2位に持ち直すと「カムバック・キッド」と称し、その後の指名獲得につなげた。

バイデン氏の頼みは西部ネバダ州、南部サウスカロライナ州と続く次戦以降で増える非白人の有権者だ。高い黒人の支持率に期待を寄せるが、それは白人の支持があってこそだ。米メディアには「白人が離れた以上、黒人にもバイデン氏が有力候補に映らなくなってきた」(政治専門誌ポリティコ)との分析も出始めた。

求心力を失いつつある候補が再浮揚のきっかけをつかむのは極めて難しい。失速を受け、同氏の献金者の一部は中道派ブルームバーグ元ニューヨーク市長(77)への支援も検討し始めたという。

「大事なのは経済なのだ、愚か者」。クリントン氏は92年の選挙戦でこんなスローガンを打ち出し、現職のブッシュ大統領(父)を破った。当時の陣営幹部は最近、英紙フィナンシャル・タイムズに「大事なのは勝つことだ、愚か者」と題して寄稿した。「左派候補ではトランプを倒せない」というその警鐘は、惑う民主穏健派の苦悩そのものである。

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