新顔が続々発車! 絶景もグルメも満載の観光列車10選
新顔が続々登場している観光列車。地元の食材を使った料理や人々とのふれあいなどが満載だ。ご当地感が楽しめる列車を、専門家15人が選んだ。
1位 えちごトキめきリゾート雪月花
山に海、ふるさと原風景

外観は日本の伝統的な色の1つ、黄みがかった赤色の「銀朱(しゅ)色」で塗装し、内装は越後杉や燕三条の金属加工技術など地元、新潟にこだわった。「KING OF 観光列車。山あり海あり、日本のふるさとの車窓。特別な空間に浸れる」(南田裕介さん)
広々とした窓から眺める日本海の大海原や広がる田んぼ、トンネルの中にある筒石駅など見どころが尽きない。山あいの二本木駅では、地元有志の出迎えを受け、列車が前後に進行方向を変えて急勾配をのぼるスイッチバックが体験できる。直江津駅では駅弁の立ち売りも。冬は城下町の高田駅で下車し、風情ある街並みや築100年超の映画館を散策する。
料理は上越妙高駅発が、十日町出身のシェフ・飯塚隆太さん監修のフレンチ。糸魚川駅発では大火でいったん全焼しながらも再建した老舗料理店「鶴来家」の和食が味わえる。取材時は紅ズワイガニのちらしずしや新潟の郷土料理「のっぺ」の糸魚川版「こくしょ」だった=写真右。「地元食材を生かし、銘酒とともに味わう楽しみがあふれる。レストラン列車のひとつの完成形」(瀬端浩之さん)
天然の冷蔵庫「雪室」で寝かせたコーヒーや燕市伝統の磨きの技が光るぐい呑(の)みなど土産もそろう。「新幹線駅発着なのもメリット」(長根広和さん)
(1)運行会社、開始年 えちごトキめき鉄道、2016年(2)主な区間と大人1人料金 上越妙高―糸魚川間、食事込み1万7500円、12~2月は特別運行でルートや価格が異なる(3)https://www.echigo-tokimeki.co.jp/setsugekka/
2位 四国まんなか千年ものがたり
妖怪タヌキ姿でお出迎え

香川県の善通寺や金刀比羅宮、徳島県の平家落人の里・祖谷(いや)渓を縫うように走り、里山と渓谷の景観が楽しめる。車両デザインを社員が担当したのをはじめ、住民も参加する手作り感のあるおもてなしが特徴だ。
囲炉裏のある古民家をモチーフにした内装で、背もたれを低くするなど両側の窓から景観を眺めやすくしている。阿波川口駅では妖怪タヌキを意識した姿で地元の人々がお出迎え。「地域の愛情を感じる。沿線からのお手振りも楽しみのひとつ」(真柄智充さん)。スイッチバックを体験できる坪尻駅ではホームで記念撮影の時間も。
食事は大歩危(おおぼけ)駅発なら、弁当を持って近くの山や浜に出かける「遊山」をイメージした重箱だ。「遊山箱のごちそう越しに眺める絶景が忘れられない」(石井宏子さん)
(1)JR四国、17年(2)多度津―大歩危間、3800円(特急、グリーン料金込み)、食事代は別でルートにより4600円か5600円(3)https://www.jr-shikoku.co.jp/
3位 或る列車
スイーツ堪能、新コースも

明治期に九州鉄道(当時)が米メーカーに発注したものの、国有化に伴い一度も営業運転しなかった豪華列車がモデル。デザイナーの水戸岡鋭治さんが車両デザインし、「手を抜かず、緻密かつ豪華なインテリアは感動的」(野田隆さん)。
弁当とスイーツ4品からなるスイーツコースのレシピを考案するのは、著名シェフの成沢由浩さん。九州各地で生産した果物を使い、器も九州各地の職人が手掛けたもの。「今まで乗った観光列車のなかで、一番ぜいたくで優雅な時間を過ごせた。何度でも乗りたくなる」(村井美樹さん)
地元と連携した試みが企画されることもある。現在は車両点検で休止中だが、3月からは博多駅とハウステンボスを結ぶ新ルートになる。過去には長崎駅で長崎くんちの「龍踊(じゃおどり)」で出迎えるイベントがあった。
(1)JR九州、15年(2)ハウステンボス―博多間、食事込み2万6000円~(3)http://www.jrkyushu-aruressha.jp/
4位 HIGH RAIL 1375
星座あしらい星空を満喫

JR線では最も標高の高い地点(1375メートル)を通る小海線で「天空にいちばん近い列車」がコンセプト。「『銀河鉄道の夜』をほうふつとさせるロマンチックな列車」(更科登さん)。星座をあしらった座席や、ドーム型天井に星空を映し出すギャラリーがある。
野辺山駅で45分ほど停車して星空観察会が楽しめる夜間運行の「HIGH RAIL 星空」も人気がある。「駅に下車して星空鑑賞ができるなんてここだけ! 地元スタッフの案内も魅力」(久野知美さん)
(1)JR東日本、17年(2)小諸―小淵沢間、2360円(指定席券込み)(3)https://www.jreast.co.jp/nagano/
5位 THE ROYAL EXPRESS
壮観な雛のつるし飾り

横浜と伊豆半島を結ぶ。子どもが遊べるスペースがあったり、伝統工芸品やステンドグラスがちりばめられた空間があったり。デザインは水戸岡さんが手掛ける。「8両すべてのインテリアが異なる車内は走る美術館。バイオリンのライブ演奏に包まれながらのランチはゴージャスそのもの」(櫻井寛さん)
季節に合わせて3月は伊豆稲取地方の伝統「雛(ひな)のつるし飾り」を飾る。伊豆の旅館に泊まり周辺を観光するプランがあるほか、8月には北海道内を巡るクルーズも計画する。
(1)東急・伊豆急行、17年(2)横浜―伊豆急下田間、食事込み2万6000円~(3)https://www.the-royalexpress.jp/
6位 THE RAIL KITCHEN CHIKUGO
車内で焼きたてピザ

福岡市の中心部から大牟田市へ、住宅街や田園地帯を縦断する。キッチンクロスをイメージした外観や八女の竹を使った竹編みの天井、家具の街・大川の家具など見どころが多い。
目玉はオープンキッチンのピザ窯。筑後地方の野菜や小麦を使って作る。「動くレストランに徹した潔さ。窯を載せてアツアツのピザを食べさせるなんてすごい。地元に末永く愛されてほしい」(杉山淳一さん)。西鉄福岡(天神)から太宰府へ行くプランは地元人気店のパンやコーヒーが出る。
(1)西日本鉄道、19年(2)西鉄福岡(天神)―大牟田間、食事込み8800円(3)https://www.railkitchen.jp/
7位 一万三千尺物語
職人が握るすしに舌鼓

立山連峰から海の幸豊かな富山湾の底までの高低差4000メートルは、尺貫法で一万三千尺だ。天井や床、格子などの内装には地場の「ひみ里山杉」を使用。「車窓からみえる山々とマッチし、家にいるよう。職人がすしを握る様子もみられ、地元のもてなしを感じる」(北栄階一さん)
乗車中は地酒を味わったり、ガイドによる地元の案内や小話に耳を傾けたり。富山駅発着で、富山県東部へ向かって泊駅で折り返す「富山湾鮨(ずし)コース」と高岡駅や黒部駅に行く「懐石料理コース」がある。
(1)あいの風とやま鉄道、19年(2)富山駅発着、食事込み1万3000円~(3)https://www.13000story.com/
8位 ことこと列車
地元料理にのどかな車窓

炭鉱で栄えた筑豊地区をゆっくりと「ことこと」走る。福岡出身のシェフ、福山剛さん監修のフレンチが味わえる。前菜の「ことことボックス」は沿線9市町村の食材を使う。4月にメニューを一新する予定。
「産地だったことにちなんだ卓上のペーパーウエイトが本物の石炭。車内のBGMが炭坑節をイメージさせるのもいい」(小山健志さん)。大川組子や寄せ木細工を使った内装、外装のデザインは水戸岡さんが担当。
(1)平成筑豊鉄道、19年(2)直方―行橋間、食事込み1万4800円(4月からは田川伊田発着の新ルート、価格も変更)(3)http://www.heichiku.net/cotocoto_train/
8位 ベル・モンターニュ・エ・メール(べるもんた)
地酒とおつまみでほろ酔い

高岡駅を起点に海に向かう氷見線と、山に向かう城端線は美しい景観で知られる。名称はフランス語の「美しい山と海」が由来。車内には沿線の伝統工芸品「井波彫刻」がある。
職人が握る「ぷち富山湾鮨(ずし)セット」(要予約、2100円)が味わえる。「車窓に広がる富山湾を眺めて頬張ったとき『はぁ~幸せ』という言葉しか出てこなかった」(木村裕子さん)。地酒やつまみのセット、海鮮の丼も人気。
(1)JR西日本、15年(2)高岡―氷見間、860円(指定席券込み、食事は別)(3)https://www.jr-odekake.net/railroad/kankoutrain/area_hokuriku/berumonta/
10位 ○○のはなし
名産や歴史のクイズに挑戦

名称の「はなし」は山陽本線・山陰本線沿いにある萩、長門、下関の頭文字。車内では沿線の食や歴史などを紹介するクイズや催しがある。「鮮やかな色のグラデーションとハマユウなどの花をあしらった車両の美しさは魅力的。おひとり様の女子旅にもおすすめ」(水津陽子さん)
食事は時期やルートにもよるが、長門生まれの詩人、金子みすゞにちなんだ「みすゞのふるさと弁当」や「夢のはなし弁当」(要予約、各2600円)が手に入る。
(1)JR西日本、17年(2)新下関―東萩間、2510円(指定席券込み、食事は別)(3)https://www.jr-odekake.net/railroad/kankoutrain/area_hiroshima/marumaru_no_hanashi/
手作り感のある地方鉄道も善戦
2013年の観光寝台列車「ななつ星in九州」の登場で、改めて注目が集まった観光列車。15年に北陸新幹線の金沢延伸を受けて「花嫁のれん」が、16年に今回1位の雪月花、17年に観光寝台列車「トランスイート四季島」「トワイライトエクスプレス瑞風」が続くなど、毎年新顔の観光列車が登場。20年も高知で「志国土佐 時代(トキ)の夜明けのものがたり」が運行開始の予定だ。
今回のランキングは2015年以降に走り始めた観光列車に注目。寝台列車は除き、その土地ならではの演出や食材、沿線の住民とのふれあいなど、列車の旅ならではのご当地感覚が楽しめるものを選んでもらった。地域おこしを狙った手作り感あふれるおもてなしが光る地方の鉄道会社の列車が善戦。圏外だったが道南いさりび鉄道「ながまれ海峡号」や島原鉄道「しまてつカフェトレイン」などを応援する声が集まった。
観光列車は運行日が土日祝日だけの場合が多い。多くは事前予約が必要で、料理や催しは時期により変わる。情報収集して出かけよう。
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調査の方法
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[NIKKEIプラス1 2020年2月15日付]
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