サムスン、動画・ゲームで米大手と提携 アップル対抗

【シリコンバレー=佐藤浩実、ソウル=細川幸太郎】韓国サムスン電子は米国時間11日、米ネットフリックスや米マイクロソフトなどと動画やゲームのコンテンツ分野で提携すると発表した。次世代通信規格「5G」の強みを生かせるスマートフォン向けコンテンツを充実させ、自前でそろえる米アップルに対抗する。5Gスマホは品ぞろえを増やし世界展開する。コンテンツ、ハードの両面で事業強化を急ぎ、スマホ世界首位の座を死守する構えだ。
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「サムスンは新しいモバイル体験のイノベーター(革新者)になる」。サンフランシスコで11日開いた最新スマホ発表会。同社のスマホ部門トップに就いた盧泰文(ノ・テムン)氏は宣言した。この日に紹介した提携先はネットフリックスやマイクロソフト、米グーグル、スウェーデンのスポティファイ・テクノロジーなど。いずれも動画やゲーム、音楽配信を手がける世界大手だ。
ネットフリックスとの提携では、サムスンのスマホ利用者向けの「特典映像」を用意するほか、アプリを開かなくても作品を簡単に検索できるようにする。ネットフリックスのジャッキー・リー・ジョー最高マーケティング責任者(CMO)は「サムスンのスマホでネットフリックスの視聴体験を最大化することが提携の使命だ」と話す。

マイクロソフトとは同社が開発中のクラウドゲームをサムスンのスマホで遊びやすくする仕組みを作る。
サムスンが有力企業と相次ぎ提携するのは、自前でコンテンツをそろえるアップルに対抗するためだ。アップルは音楽配信に加えて19年にニュース、動画配信、ゲームの定額制サービスを開始。同社が今秋に発売すると見込まれる5Gスマホに向けて準備を本格化している。
サムスンはすでに5Gスマホを一部地域で展開しているが、ハード中心の戦略だった。高速大容量のデータがやり取りできる5G普及で需要拡大が見込まれるコンテンツを外部から取り込むことで、シェア拡大を狙う。
コンテンツ会社にとっても、競合関係にあるアップルよりサムスンのほうが提携のメリットが見込める。各社は5Gスマホを自社のコンテンツの「出口」と位置づける。米国以外に事業の伸びしろを求めており、アジアのスマホ販売で高シェアのサムスンは魅力的だ。
サムスンは提携戦略に加えて、5Gスマホの品ぞろえを増やす。
縦方向に折り畳める新機種「ギャラクシー Zフリップ」を14日の韓国を皮切りに世界で発売する。畳むと手のひらに収まり、重さは183グラムと19年に発売した「見開き型」より3割軽い。価格は1380ドル(約15万円)と見開き型より3割程度抑えた。
盧氏は「新しい形で新しい種類のモバイルの体験を示すことで『フォルダブル』というカテゴリーを作る」と強調した。折り畳める有機ELパネルを自社で量産できる強みを生かし、今後も新しいスマホ形状を開発していく考えだ。
旗艦モデル「ギャラクシーSシリーズ」は、すべての機種で5Gに対応。最上位モデルにはスマホで世界最高水準となる100倍ズームを搭載した。SNS(交流サイト)に投稿しやすいよう、動画を撮影すれば人工知能(AI)で美しく加工する新機能も備えた。

サムスンに攻勢をかけるのはアップルだけでない。米調査会社IDCによると、19年の世界のスマホ出荷台数でサムスンは前年比ほぼ横ばいの2億9570万台と首位を守った。シェアを伸ばしたのが2位の中国・華為技術(ファーウェイ)で、17%増の2億4060万台となった。
ファーウェイは自社スマホに自前のアプリストア「アップギャラリー」を搭載し、ゲームや動画など幅広いアプリをそろえる。米政府の制裁を受け、今後発売するスマホ新機種ではグーグルのアプリストアが搭載できなくなる見込みのため、自前アプリストアのアプリを拡充している。
サムスンが後続の猛追をかわせるかどうか。5Gスマホが出そろう20年は競争が一段と激化しそうだ。
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