ダイムラー覆う「三重苦」 利益率の低下止まらず
CASE・ディーゼル関連・肺炎

2020/2/12 0:38 (2020/2/12 23:05更新)
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ケレニウス社長は就任早々課題が山積(11日、シュツットガルト)

ケレニウス社長は就任早々課題が山積(11日、シュツットガルト)

高級車で世界首位の独ダイムラーの業績悪化が止まらない。同社が11日に発表した2019年12月期通期の決算は2年連続の最終減益。主因はディーゼル関連費用だが、電動化などの開発費の増加が重くのしかかる。足元では新型肺炎の感染拡大でけん引役の中国市場も先行きが見えず、「三重苦」の状況だ。19年に就任したオラ・ケレニウス社長にとって、厳しい滑り出しとなっている。

本社のある独南部シュツットガルトで開いた記者会見で、ケレニウス社長は「ダイムラーにふさわしい結果ではない」と憤りを隠さなかった。売上高は1727億4500万ユーロ(約20兆7千億円)と前の期比3%増えたものの、純利益は23億ユーロと67%も減ったからだ。

減益要因として表面的にはディーゼル関連費用の影響が大きい。15年に独フォルクスワーゲン(VW)の排ガス不正が発覚して以降、ドイツなどでダイムラーなどのディーゼル車にも疑惑が広がった。ダイムラーは不正は否定するが、19年は罰金やそれを見越した引き当てなどの関連費用で40億ユーロを計上した。

ディーゼル関連費用を巡り、19年6月以降で3度も業績を下方修正した事態にあるアナリストは「マネジメント不全。経営陣刷新が必要」と厳しい。ケレニウス社長は「簡単な話なら4年半もかからない。できるだけ早く解決したいとしか言えない」と歯切れが悪い。

ダイムラーは業績を語る指標として営業利益に相当するEBIT(利払い・税引き前利益)を使ってきたが、今回は新たに「調整後の」EBITという指標を示した。一過性の費用を除いたもので、ディーゼル関連費用を特殊要因と強調したい意図が透けて見える。

この1年、同じディーゼル問題を抱えるVWやトヨタ自動車などの株価が上昇するなかでダイムラーの下落が目立つ。時価総額は約5兆5000億円と米テスラの約3分の1にとどまる。

ただ、本当の問題は本業の収益力が低下していることだ。「メルセデス・ベンツ」の販売台数は4年連続で独BMWを抑えて高級車ブランド首位だったが、利益は調整後のEBITと18年のEBITを比べても8%減った。販売増で4億ユーロの増益要因となったが、開発費などの「一時的でない」費用が16億ユーロ増え、帳消しになっている。

QUICK・ファクトセットによれば、18年度のダイムラーの研究開発費は77億ドル弱(約8400億円)と3年前に比べて47%増えた。自動運転や電動化といった「CASE」関連の開発費用が膨らんでいるためで、同期間の増加率で同業のVW(9%)などを大きく上回っている。

高級車は一般的に大衆車に比べて利幅が大きいが、ダイムラーの乗用車部門の売上高調整後EBIT率は6.2%で下落が著しい。独BMWも利益率低下に苦しむ。共に乗用車の販売台数が250万台前後の高級車メーカーにとっては次世代車の開発負担は重い。販売台数の7割以上が大衆車のVWは19年1~9月の特殊要因を除いた営業利益率は7.9%だ。

先行きも厳しい。20年は欧州連合(EU)の二酸化炭素(CO2)排出規制に対応するための電動車など開発費が増え、乗用車部門の利益率の見通しは19年よりさらに最大2.2ポイント低下すると予想する。トラックも日欧米の需要減が顕著で補完は期待できない。

ケレニウス社長は「売り上げ成長の想定が強すぎた」と認め、設備投資と研究開発費の増加に歯止めをかける。乗用車部門の20年と21年平均の設備投資・研究開発費は134億ユーロを見込み、19年実績より4%減らす方針だ。「原材料費、固定費、人件費の削減に着手した」と強調する。

気の早い地元メディアは連日、旗艦車種「Sクラス」の一部モデルの開発中止や1万5千人規模の人員削減を報じた。ケレニウス社長は「Sクラスは年内に発売する」と報道を否定したが、人員削減の規模は明確に否定しなかった。同社は19年11月に1万人以上の人員削減を発表している。

足元で逆風なのが、販売台数の3割を占める中国での新型肺炎の拡大だ。ケレニウス社長は「中国の自動車市場やサプライチェーンに影響を与える可能性があり(ダイムラーの)乗用車販売の通期予想にも一部反映した」と述べた。ダイムラーは20年の世界の乗用車とトラックの販売台数が19年を下回るとみている。

前任のディーター・ツェッチェ氏が、ケレニウス氏への社長交代を発表したのが18年9月。当時は業績悪化が顕在化しておらず、CASEの推進役を託されたと業界は受け止めた。しかし19年5月の社長就任を挟んで業績は急降下し、立て直しがケレニウス氏の最優先課題になっている。

記者会見の途中ではステージ上に展示されていた車両のハザードランプが突然点滅するハプニングが起きた。社長就任前に「頭がいいが苦労をしていないのが不安材料」と指摘されていたケレニウス氏の今後の難路を示唆するかのようだった。(フランクフルト=深尾幸生、山田航平)

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