フィリピン、地位協定破棄を米に通告 軍事協力に影

2020/2/11 18:59
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フィリピンと米国が実施した合同軍事演習(2019年4月、フィリピン北部ザンバレス州)=AP

フィリピンと米国が実施した合同軍事演習(2019年4月、フィリピン北部ザンバレス州)=AP

【マニラ=遠藤淳】フィリピン政府は11日、米軍との合同演習を可能にする「訪問軍地位協定(VFA)」を破棄すると米国に通告したと明らかにした。ドゥテルテ大統領の側近のビザ発給を米が拒否したため、同氏が破棄を命じた。失効まで180日間の猶予期間があり交渉の余地はあるが、両国間の軍事協力に影を落とすのは必至だ。

フィリピンのパネロ大統領報道官は11日の記者会見で「大統領が昨夜、VFAを破棄するとの通告書を米国に送るようロクシン外相に指示した」と述べた。その後、ロクシン氏は「在比米大使館の首席公使がVFA破棄に関する通告書を受け取った」とSNS(交流サイト)に投稿した。

在比米大使館は声明を出し、通告を受領したことを認めたうえで「米比同盟に重要な意味をもたらす。共通の利益へ前進させられるよう最良の方策を慎重に検討する」と表明した。

VFAは「相互防衛条約」に基づき、フィリピンに派遣される米兵の法的地位を定める。米軍基地が全面撤退した6年後の1998年に締結された。当時、領有権を争う南シナ海で中国が示威活動を活発化させており、途絶えていた大規模な合同軍事演習を再開する狙いがあった。

「ビザ発給拒否を見直さなければ(両国関係の)根幹のVFAを破棄する」。ドゥテルテ氏は1月23日、腹心のデラロサ上院議員が米国からビザを取り消されたことに怒りをぶちまけた。米国はドゥテルテ氏の強権的な薬物捜査を批判しており、デラロサ氏が国家警察長官時代に捜査を指揮したことがビザ拒否の背景にあるとみられる。

VFAには米兵が罪を犯した場合、「重大事件を除いて米国が裁判権の行使を要求できる」といった規定がある。ドゥテルテ氏はかねて、フィリピンの人権状況を問題視する米国に対し不満を募らせており、ビザ問題を口実に不平等だとみるVFAの破棄命令に踏み切ったようだ。

VFAは「いずれかが破棄通知をした日から180日後に失効する」と規定する。南シナ海で中国に対峙している国軍や国防省は、VFAの維持を強く求めている。今後、両国が改定に向けて交渉するといった可能性があり、実際に破棄されるかは現時点では不明だ。

仮に破棄されれば、年数回の合同軍事演習が実施しにくくなる可能性がある。2014年に締結され、フィリピン軍基地内に米軍駐留を認める「防衛協力強化協定」が実効性を失うとの見方もある。米軍の存在感が低下し、中国が海洋進出の動きを強めることも考えられ、地域の安全保障に与える影響は大きい。

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