メルケル氏後継選び、「強い遠心力」が翻弄 極右で混乱

ドイツ政局
2020/2/11 3:20
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次期首相になることを断念したクランプカレンバウアーCDU党首=AP

次期首相になることを断念したクランプカレンバウアーCDU党首=AP

【ベルリン=石川潤】ドイツの最大与党、キリスト教民主同盟(CDU)の党首でメルケル首相後継の最有力とみられていたクランプカレンバウアー氏が10日、次期首相候補になることを諦め、党首も退任すると表明した。引き金になったのが、独社会や党内で勢いを増す「強い遠心力」(同氏)だ。極右や緑の党の台頭で世論が左右両極に引き裂かれるなか、中道色の強い既存政党の混迷が深まっている。

「我々は今よりも強くならなければいけない」。10日の記者会見でクランプカレンバウアー氏は「強さ」という言葉を繰り返した。2018年12月にメルケル氏の後を継いでCDU党首に就任した際には自分たちが「欧州で最後に残った国民政党」だとし、ポピュリズム(大衆迎合主義)の防波堤になると意気込んだが、その目的は果たせなかった。

19年の旧東独での3つの州議会選挙では、極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」の台頭を許した。2月には独東部でAfDの支持を受けた州首相が誕生する事態となり、CDUも問題の候補に票を投じたとして強い批判を浴びた。

極右に流れる票を取り戻そうと党内で保守回帰を求める声が強まる一方、難民問題などで保守派に歩み寄ると、メルケル路線を支持する中道派の反発を招いた。党と自分自身が股裂きになり、求心力が急速に失われるなか「かなり長い時間」をかけて今回の決断に至ったとクランプカレンバウアー氏は説明した。

「首相と党首が分かれ、次期首相候補を定めなかったことがCDUを弱めた」との恨み節も漏れた。党勢の退潮で追い詰められたメルケル氏は18年秋、首相は続投するが党首だけクランプカレンバウアー氏に譲るという決断を下した。メルケル氏の延命にはつながったが、権力の分散は党にとってマイナスだった。

クランプカレンバウアー氏は通常12月に開く党大会で、21年秋の連邦議会選挙の顔となる次期首相候補を決めてから、党首を退くという。自らの轍(てつ)を踏ませないように、首相候補と党首は同じ人物が望ましいという考えを示した。

次の首相候補選びも、強まる遠心力にどう対処するかが焦点になる。党内の保守派では、極右に対抗するためにはメルケル時代に左に傾きすぎた党の路線を右寄りに戻すべきだとの意見が多い。反メルケルの色彩が強いメルツ元院内総務やシュパーン保健相らが有力候補に挙げられる。

一方、中道派の有力者、ラシェット副党首は10日「党の進む道は中道でなければならない」と語った。中道にとどまることが幅広い票を集め、選挙後の政権協議の選択肢も増やすというしたたかな計算がにじむ。

21年秋の次の選挙までドイツ政治は不安定な状況が続く。既存政党の政治家同士の足の引っ張り合いに有権者が愛想を尽かせば、極右政党がさらに勢いづきかねない。

かつて4割を超えていた二大政党の支持率はCDUが27%、ドイツ社会民主党(SPD)が14%にとどまる。緑の党が22%、AfDが14%で追い上げるなか、ドイツで初めて緑の党出身の首相が誕生するとの観測も飛び交い始めた。

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