民主第2戦、格差・薬物問う サンダース氏リード保つ
大統領候補争い、ニューハンプシャー州で11日予備選

米大統領選
2020/2/10 19:30
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【ロチェスター(米ニューハンプシャー州)=河浪武史】米民主党の大統領選候補争いは、11日の東部ニューハンプシャー州の予備選で第2戦を迎える。同州は建国13州の一つで、今でも売上税や所得税はゼロと「自由経済」を貫く。ただ、支持率首位は大増税案のバーニー・サンダース上院議員だ。背景には格差拡大や薬物横行など、全米を覆う深刻な「アメリカン・ドリーム」の衰えがある。

サンダース氏は経済格差と薬物汚染の対策を強調する(8日、米ニューハンプシャー州)

ブティジェッジ氏がニューハンプシャーでも支持率が急伸する

ニューハンプシャーのモットーは「自由か死か」だ

ニューハンプシャー州の予備選は指名争い序盤の勢いが表れ、11日の深夜(日本時間12日昼)には大勢が判明する見込みだ。世論調査ではサンダース氏が支持率26.6%とリードを保つ。初戦のアイオワ州で躍進したピード・ブティジェッジ前サウスベンド市長が21.3%で猛烈に追い上げる。本命視されながら初戦で惨敗したバイデン前副大統領は早くも正念場だ。

サンダース氏は8日、氷点下10度近くに冷え込んだ同州ロチェスターで演説した。「2016年の前回選挙で勝って勢いに乗ったのがニューハンプシャーだった。とても感謝している」。著名映画監督のマイケル・ムーア氏も演壇に立ち「バーニーは78歳。もう自分の将来のために戦うわけないだろ? 若いあなたたちのために戦っているんだ」と聴衆を鼓舞した。

「医療費が払えず年50万人が破産する。こんな国は米国だけだ」。サンダース氏は富裕層などへの増税で国民皆保険を導入すると公約した。1.5兆ドルもの残高がある学生ローンも、株式取引などに新税を課して「すべて帳消しにする」と主張。「急進的ではあるが、今はバーニーの言うように政策の優先事項を切り替えるときだ」。支持者のマリア・スパークスさん(37)もそう訴える。

もっとも、州税制は売上税も個人所得税もゼロで、サンダース氏の「大増税・大分配」とは正反対だ。同州は18世紀に英国から独立したが、その建国運動の源泉は重税への激しい怒りだった。州が発行する自動車プレートには、自由のために徹底抗戦する「自由か死か(Live free or die)」というモットーが今でも刻まれているほどだ。

「この州でオピオイドに触れないわけにはいかない。米国で最も腐敗しているのは製薬会社だ。政権を取れば、この犯罪を必ず調査する」。大増税のサンダース氏が支持率上位をいく一つの理由は、地元に近い利点に加え、薬物中毒対策をいち早く主張してきたからだ。同州は薬物オピオイドの過剰摂取による死亡率が全米の2倍強と高い。ロチェスターの市街地だけでも、依存症の治療施設が3カ所もある。

米東部は19世紀に繊維産業などで隆盛を極めたが、海外への生産移転で早くからグローバル化と経済格差の痛みを負った。オピオイド中毒は中高年の男性に多く、米国の平均寿命を引き下げて、ノーベル賞経済学者のアンガス・ディートン氏が「絶望死」と呼んだほどだ。全米でも200万人が依存症とされ、ホワイトハウスは経済損失を国内総生産(GDP)の2.8%と試算する。

変革を求める有権者の声は、新星であるブティジェッジ氏も後押しする。初戦のアイオワ州での躍進で、次戦のニューハンプシャー州でも支持率が急伸。8日の集会では「中間層ではなく巨大企業に減税を与えるような大統領は、倒さなくてはならない。労働者の賃金引き上げを実現する」などと主張した。

ブティジェッジ氏も、公的医療保険や住宅補助の拡充など低所得層の支援策をずらりと並べる。連邦法人税率は21%から35%に引き上げるとしており、急進左派ほどではないものの「増税・再分配」路線だ。同州は白人比率が9割強と高く、黒人や中南米系の支持率が高いバイデン前副大統領は伸び悩んだままだ。

もっとも、同州で運輸業を営む男性(57)は「オバマケア(医療保険制度改革)で負担が増した。これ以上の増税なんてやってられない」と民主党候補の構想に背を向ける。ニューハンプシャー州は与野党が拮抗する激戦州だ。トランプ氏は16年の選挙でクリントン元国務長官に敗れたものの、得票率差は1%未満と極めて接戦だった。

経済格差と薬物中毒で揺れるニューハンプシャー州は、中間層の衰退という米国全体の縮図でもある。「大・福祉国家」構想か、建国以来の「小さな政府」か。国を二分する思想の戦いは、11月の選挙で問い直される。

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