国際化するアカデミー賞と韓国映画の台頭
国境越える監督たち 映画振興策も背景に

アカデミー賞を選考する米国の映画芸術科学アカデミーの会員は急速に多様化、国際化している。2016年に受賞者の「白人偏重」が批判されたのを契機に、世界の映画人を対象に毎年600~900人台という大量の招待状を送付し、新規会員を増やしてきた。12年に6千人弱だった会員は19年に9千人弱に膨らみ、非白人や女性が大きく増えたといわれる。
受賞作も多様化した。昨年はスペイン語映画「ROMA」が監督賞など3部門で受賞。今年の「パラサイト」は作品賞など4部門を制し、世界化の流れを決定づけた。
何より純然たる韓国映画、英米資本が入っていない映画が初めて作品賞を受けた意味は大きい。勃興期から世界の才能を集めて発達したハリウッドでは、外国人の受賞は珍しくない。だが映画産業の牙城なだけに、純粋な非英米映画が頂点に立つことはなかった。米国のアカデミー賞が、名実ともに世界のアカデミー賞に脱皮したといえる。
同時に世界市場を目指す非ハリウッド映画の増加も近年の潮流だ。欧州を中心に国際共同製作が定着し、アジアの監督もやすやすと国境を越える。ポン・ジュノ監督は韓米仏合作のSF映画「スノーピアサー」(13年)、ネットフリックスが配信した韓米合作「オクジャ/okja」(17年)など、海外制作に果敢に取り組んできた。さらに「パラサイト」がカンヌ国際映画祭で韓国映画初の最高賞を受賞するなど、着実に世界で地歩を築いた。
その背景に00年代からの韓国の積極的な映画振興策があることは見逃せない。フランス型の助成制度を導入し、世界進出を後押しした。自国市場が小さい韓国では避けて通れない道であり、その点では近年の韓流アイドルの世界的活躍とも通じる部分がある。自国市場に安住している大手映画会社をはじめ、日本の映画人がポン監督に学ぶことは多々ありそうだ。
(編集委員 古賀重樹)