米雇用22万人増と堅調 1月、新型肺炎で利下げ観測も

2020/2/7 22:50
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【ワシントン=河浪武史】米労働省が7日発表した1月の雇用統計(速報値、季節調整済み)は、景気動向を敏感に映す非農業部門の就業者数が前月比22万5千人増えた。市場予測(約16万人増)や前月(14万7千人増)を上回り、雇用情勢は好調だ。ただ、新型肺炎のリスクから、米国市場で利下げ観測が再浮上。労働市場の底堅さとは反対に、催促相場が再来する可能性もある。

米FRBは再び難しいかじ取りを迫られる可能性が出てきた=ロイター

米FRBは再び難しいかじ取りを迫られる可能性が出てきた=ロイター

1月の失業率は3.6%と前月から0.1ポイント悪化したものの、約50年ぶりという歴史的な低水準にある。直近3カ月の雇用者数の伸びは月平均21万強と、米連邦準備理事会(FRB)が巡航速度とみる月10万人を大きく上回った。長年、低下傾向にあった労働参加率も、前月比0.2ポイント上昇して63.4%となった。

1月の就業者数を産業別にみると、ネット通販などが後押しして運輸・倉庫業が2万8千人増と大きく伸びた。ヘルスケアやレジャー・接客業もそれぞれ4万人前後の高い伸びとなった。雇用改善が消費を促し、それが内需型産業の拡大につながる好循環にある。全体の平均時給も前年同月比で3.1%増え、18カ月連続で3%台を保った。

雇用の拡大は、米中貿易戦争の休戦で企業心理が持ち直した影響が大きい。米サプライチェーンマネジメント協会(ISM)の製造業景況感指数は、1月に50.9まで上昇して6カ月ぶりに節目の50を超えた。同指数は19年8月から50を下回り続けて「不況」を示していた。

FRBは雇用改善を受けて、利下げを休止する考えを表明している。19年は貿易戦争を警戒して3回もの利下げに踏み切ったが、パウエル議長は1月の記者会見で「不確実性は和らぎ、現状の金融政策が適切だ」と強調した。米連邦公開市場委員会(FOMC)に参加する17人の中で、20年中の利下げを想定するメンバーは1人もいない。

ただ、FRBの「無風シナリオ」は早くも揺れる。中国発の新型肺炎で景気不安が浮かび、金利先物市場ではFRBの利下げ観測が再浮上する。FRBが7月末までに0.25%以上の利下げに踏み切るとの予測は46%まで高まり、「12月までに少なくとも1回の利下げを決断する」との観測は既に75%に達している。

FRBは新型コロナウイルスが経済に及ぼす影響について「極めて深刻だ。中国経済には影響が出るだろう」(パウエル議長)と指摘するが、米国で利下げが必要とはみていない。

アトランタ連銀のボスティック総裁は「金利見通しに変更はない」と主張。サンフランシスコ連銀のデイリー総裁も「米景気に深刻な影響が出るとは考えていない」と断じている。

パウエル体制はこれまでも「催促相場」に揺さぶられてきた。18年12月には株価が急落し、19年中の利上げシナリオを即座に撤回した。株価急落の端緒は、パウエル議長が「資産縮小は今後も機械的に進めていく」と話したことだった。

そのため、FRBは保有する米国債などの量を減らす「量的引き締め」も停止。貿易戦争を理由に利下げに踏み切り、19年秋には短期金融市場の金利急騰を受けて、短期国債を月600億ドル(約6兆6000億円)買い入れる量的緩和と似た市場安定策も開始した。

ただ、短期市場は落ち着きを取り戻しているため、FRBは4月以降、短期国債の買い入れ策を段階縮小する考えをにじませ始めた。投資家が再び「量的引き締め」と受け止めれば、相場を急激に冷やす可能性がある。

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