「EV」価格破壊、インドから 自動車ショー開幕
マヒンドラ、100万円台前半のSUV

アジアBiz
2020/2/7 22:45
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マヒンドラが「インドで最も手ごろな価格」とアピールするSUVタイプのEV(6日、ニューデリー近郊)

マヒンドラが「インドで最も手ごろな価格」とアピールするSUVタイプのEV(6日、ニューデリー近郊)

【ニューデリー=早川麗】インドで2年に1度開かれる国際自動車ショー「オートエキスポ」の一般公開が7日、ニューデリー近郊で始まった。大気汚染の改善に向けて4月、欧州並みに厳しい新たな排ガス規制が導入されるため、電動車の出展が相次いだ。なかでも注目されたのが、多目的スポーツ車(SUV)ながら実質100万円台前半で購入できる電気自動車(EV)を発表した地場大手のマヒンドラ・アンド・マヒンドラだ。インド発のEV低価格化の波が広がる可能性もある。

「政府からの補助金を活用すれば82万5000ルピー(約127万円)で買えます」。5日、マヒンドラがSUVタイプのEVの価格を公表すると、報道陣や関係者から拍手が湧き起こった。「(この価格設定で)もうEVを買わない理由はなくなった」。パワン・ゴエンカ社長は笑顔を見せた。

日米欧メーカーなど世界大手に比べて技術力や資金力で見劣りするとされるインド勢だが、実はマヒンドラは早くからEVに熱心だった。現地の新興EVメーカーを買収したのは2010年に遡る、いわばインドでの「先駆者」だ。これまでに170億ルピーをEV関連の研究開発やインフラ投資などに投じている。

今回、低価格化に成功した理由は「部品などの徹底した現地化だ」。ゴエンカ社長は力を込める。駆動装置を含む主要部品を内製化することで、コストを大幅に下げられたという。20年度中に発売を予定するSUVのEV「eKUV100」は1回の充電で約150キロメートル走行できる。約1時間の充電で電池容量の8割を満たし、まずは都市部の住民や配車サービスの需要を見込んでいる。

EVの普及は中国が先行するものの、政府の補助金を活用しても、購入価格は10万~20万元(約160万~320万円)が中心だ。発売前で実力は未知数な面もあるが、小型車でなく、SUVでのマヒンドラのEVの価格競争力は目を引く。

一方、EVで対照的な戦略を打ち出すのが同じく地場大手のタタ自動車だ。1月末に発売したばかりのSUV「ネクソン」のEVを会場でアピールしたものの、価格は約140万ルピーからで、マヒンドラより大幅に高い。

背景には経営戦略を誤ったかつての苦い記憶がある。タタ自は09年、鳴り物入りで超低価格車「ナノ」を発売するも、豊かになってきたインドの消費者の嗜好に合わずに販売が低迷。当初は約20万円からという世界最安車が売り文句で、今も撤退は明言していないが、19年4~12月の生産・販売実績はゼロだった。

「脱・低価格路線」を掲げるタタ自のナタラジャン・チャンドラセカラン会長は「持続可能なソリューションは国の優先事項だ」と意気込む。EVの品ぞろえではマヒンドラと競っており、17年発売のセダン「ティゴール」を含め2車種のEVを発売済みだ。「2年以内に少なくとも、あと4モデルのEVを売り出す」。チャンドラセカラン会長は明らかにした。ナノと同じ轍(てつ)は決して踏まない、との強い意志が見え隠れする。

独自のスタンスで新たな需要の開拓を見据えるマヒンドラとタタ自だが、もちろん、インドでのEV化の流れは地場勢だけにはとどまらない。

「環境問題を真正面から考えるべき時代だ」。インドの乗用車市場で約5割のシェアを持つ最大手、マルチ・スズキの鮎川堅一社長も強調する。

マルチ・スズキはEVのコンセプト車を公開した(5日、ニューデリー近郊)

マルチ・スズキはEVのコンセプト車を公開した(5日、ニューデリー近郊)

マルチは今回の展示会でEVのコンセプト車を公開した。EVやハイブリッド車(HV)、天然ガス車など今後、幅広い車種をそろえ、今後2~3年でエコカー販売を合計100万台に引き上げる目標を打ち出した。

新排ガス規制に対応し、各社はEVを中心に新たな戦略を打ち出すものの、インドの自動車市場は低迷が続く。19年の新車販売台数は約381万台と18年比で13%減少。ドイツに抜かれて世界5位に後退した。金融機関の貸し渋りや経済成長の鈍化で個人消費が冷え込み、「20年は19年よりも上向くが、急速な回復は見込み薄」(鮎川社長)との見方が支配的だ。

さらに、インドでEVが普及するためには車両だけでなく、インフラ整備も欠かせない。西部のムンバイなど都市部では充電ステーションが設置されつつあるものの、「多くの利用者を受け入れるレベルではない」(鮎川社長)のが現状だ。

低価格路線と高級路線のどちらが受けるのか――。「EVの時代が到来すれば、自動車の価格は5分の1になる」(EV用の駆動モーターを手掛ける日本電産の永守重信会長兼最高経営責任者)との声もある。マヒンドラのEV戦略が現地で成功するならば、その流れがインドから国外に広がる可能性もありそうだ。

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