日本製鉄、さらなる合理化不可避 中韓台頭で稼ぐ力低下

アジアBiz
2020/2/7 23:05
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呉製鉄所(広島県呉市)は23年9月末をめどに閉鎖する

呉製鉄所(広島県呉市)は23年9月末をめどに閉鎖する

日本製鉄が大規模な生産能力の削減に踏み出す。7日、呉製鉄所(広島県呉市)の2023年9月末までの閉鎖や、和歌山製鉄所(和歌山市)の高炉の休止を正式発表した。さらなる合理化も見据える。荒療治の背景には保護主義の拡大や中韓などアジア勢の台頭による競争力の低下がある。日本の製造業の代表格である鉄鋼業の厳しさが浮き彫りになった形だ。

「将来を見据えた場合、当社の生産能力が大きすぎると考えて踏み切った」。記者会見した右田彰雄副社長は構造改革の理由をこう説明した。

閉鎖する呉製鉄所は子会社の日鉄日新製鋼が運営。21年9月末までに高炉2基すべてを休止し、23年9月末までに閉鎖する。高炉を持つ製鉄所の全面閉鎖は同社の創業以来、初となる。和歌山製鉄所では2基のうち09年に稼働した「第1高炉」を休止する。

7日に新たに発表した呉1基と和歌山1基の合計2基の休止で、日鉄のグループ生産能力の約1割にあたる年間500万トンの粗鋼生産能力を減らす。採算が低下した鋼板の加工ラインなども休止する。今回、設備休止する対象の従業員は複数の製鉄所で合計1600人。希望退職は募らず配置転換で対応するが、地域全体の雇用への影響は避けられない見通しだ。

日鉄は円高などで競争力が低下した1980~90年代の「鉄冷え」の時代にも高炉の休止など合理化を進めてきた。ただ足元では過去に経験がないほどの逆風が吹く。

第1に、米中貿易戦争の長期化による鋼材需要の低迷だ。日鉄は粗鋼生産量の4割を輸出に頼る。その大半を支えてきたのが自動車など製造業向けの鋼材需要だ。しかし米中対立の長期化で需要回復の兆しは見えない。

一方で、世界の鉄鋼の5割を生産する中国は米中摩擦を受けた景気対策で増産を続ける。鉄鉱石などの原料価格は高止まりする一方、需要減で市況は改善しない。世界の粗鋼生産能力は足元で約4割が過剰とされる。

他の鉄鋼大手も苦戦している。世界最大手の欧州アルセロール・ミタルが6日発表した19年12月期通期の決算は、最終損益が24億5400万ドル(約2690億円)の赤字。通期の最終赤字は4年ぶりだ。韓国ポスコの19年12月期の連結営業利益は、前の期比30%減の3兆8689億ウォン(約3556億円)だった。

第2に、過去の「鉄冷え」局面では存在しなかった中国などライバルの台頭だ。自動車向けでも韓国のポスコや中国の宝武鋼鉄集団などが力をつけ、稼ぐ力でも日鉄は出遅れている。粗鋼1トン当たりの収益力を示すEBIT(利払い・税引き前利益)をみると日鉄は18年度で40ドル程度。ポスコ(116ドル)や宝武(107ドル)の半分以下だ。

こうしたなか、日鉄が国内で余剰設備を抱える余裕はもはや無い。右田副社長は7日、「環境変化に応じて必要であれば次の施策を実行する」と語り、一段の能力削減の可能性を示唆した。

国内には現在、鉄鋼各社で合計25基の高炉が稼働しているが、全体で3割程度の過剰能力を抱えるとされる。JFEスチールや神戸製鋼所などの収益環境も厳しい。生き残りをかけた再編や設備の合理化が進みそうだ。

(川上梓、フランクフルト=深尾幸生、ソウル=細川幸太郎)

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