中国、新型肺炎で利下げへ 構造改革は棚上げ
企業向け融資に利子補給 税優遇も

2020/2/7 18:30
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中国人民銀行は新型肺炎が経済へ及ぼす悪影響への対応を最優先する姿勢を打ち出す=ロイター

中国人民銀行は新型肺炎が経済へ及ぼす悪影響への対応を最優先する姿勢を打ち出す=ロイター

【北京=原田逸策】中国が新型肺炎の打撃を抑えるため、金融と財政の両面で景気下支えに乗り出した。中国人民銀行(中央銀行)は20日に公表する政策金利を引き下げる検討に入った。マスクなど医療用品を生産する企業には利子補給をする。医療関係者の給与の税金も優遇する。

中国は優良企業向けに適用する最優遇貸出金利(LPR、ローンプライムレート)を政策金利と位置づけて毎月20日に公表している。いまは1年物で4・15%。人民銀の潘功勝副総裁は7日の記者会見で、2月分のLPRについて「市場はかなりの確率で下がるとみている」と言及した。人民銀幹部がここまで利下げの方向性に踏み込んで発言するのは異例だ。引き下げれば昨年11月以来、3カ月ぶりとなる。

財政出動も増やす。財政省の余蔚平次官によると、新型肺炎の関連で6日までに667億元(約1兆円)の財政資金を用意した。患者の医療費を無料にしたほか、前線で働く医師の手当やボーナスを支出している。

マスクを生産する企業などが受ける融資は実質的な借入金利が1.6%を下回るように利子補給する。交通・運輸、飲食、ホテル、旅行などは損失を翌期以降に繰り越して課税所得を圧縮できる減税措置の期間を今の5年から8年に延ばす。

中国の習近平(シー・ジンピン)指導部は金融、財政による下支えを強め、新型肺炎で景気が腰折れしないように腐心する。一方、緊急対応を優先するあまり、構造改革を先送りする動きも見え隠れしてきた。

「今回の新型肺炎は第1四半期の経済活動をかく乱する」。人民銀の潘副総裁は7日の記者会見で新型肺炎の経済への影響を率直に認めた。「旅行や飲食、娯楽などサービス業に影響する。休暇延長で操業再開が遅れたため、工業生産や建設作業にも打撃だ」(潘氏)とも指摘した。

今回の新型肺炎を巡って、人民銀は2月初めから対応へ動いた。中国の株式市場が再開した3日からの2日間で、計1兆7千億元(約27兆円)もの巨額資金を市場に供給。株価急落に歯止めをかけた。人民元の外国為替市場も安定して推移する。

マスクを生産するなど中国政府が指定した企業には低金利の融資枠3千億元も用意した。元手となる資金は人民銀が市中銀行に提供する。

通常の貸出金利が最優遇貸出金利(LPR)を下回ることは少ないが、低金利の融資枠の金利はLPRより1ポイント低い3.15%以下に設定しなければならない。さらに財政で利子補給をするため実際の金利は1.6%以下と破格の好条件になる。

財政も大盤振る舞いだ。すでに667億元(1兆円)もの財政資金を準備し、新型肺炎の患者、患者の治療にあたる医師らを後押しする。

防疫活動にかかわる企業や個人は増値税(付加価値税)、法人税、個人所得税などさまざまな税金を優遇する。医療用品の増産で設備投資をした企業には加速度償却を認めて税負担を軽減し、欠損金の繰越期間も5年から8年に延ばす。

新型肺炎が深刻化する前の昨年12月、中国財政科学研究院の劉尚希院長は「20年に再び大規模な減税・手数料下げを打ち出すことはない」と述べていた。19年の「2兆元減税」で全国の地方政府が財政難に直面したのが大きな原因だった。しかし、新型肺炎の拡大で予期せぬ財政出動を迫られた格好だ。

金融、財政を緩めるのは、20年が少しゆとりのある「小康社会」を実現する年だからだ。習氏は3日の党最高指導部の会議で「小康社会の全面建設は特にしっかりやれ」と指示し、新型肺炎が拡大しても実現を諦めない姿勢を強調した。20年の実質GDPを10年比で倍増する目標なども含まれると解釈される。

倍増達成には20年に5.6%の成長率が必要とされるが「1~3月の成長率は4%」と試算する民間エコノミストもいる。習指導部が景気下支えを強めるのは、4~6月以降のV字回復が目標達成に欠かせないからだ。

気がかりなのは構造改革も棚上げされる機運があることだ。中国の金融当局は「影の銀行」の資金源となってきた「理財商品」と呼ぶ金融商品への規制を強めるが、いまは20年末までの経過措置の最中だ。これを延長するかどうか問われた潘氏は「可能性はある。いま技術的な評価をしている」と含みを持たせた。

中国誌「財新」は「経過措置を21年末まで1年間延長することを検討」と報じている。実際に先送りすれば2回目で、不透明な資金の流れがまたも温存されかねない。

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