ドイツ、州首相1日で辞任 極右からの得票に批判集中

2020/2/7 17:29
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【ベルリン=石川潤】旧東ドイツ、チューリンゲン州のケメリヒ首相が6日、就任からわずか1日で辞任表明に追い込まれた。首相を決める州議会での投票で極右、ドイツのための選択肢(AfD)から票を得たことに批判が殺到したためだ。極右を政権樹立に関与させるべきではないというドイツの世論が首相を退陣させたが、同様の問題が今後も繰り返される素地は残っている。

独チューリンゲン州の州都エアフルトでは6日、抗議デモが起きた=ロイター

AfDはギリシャ危機のさなかの2013年に反ユーロを掲げて設立された新興政党だ。当初から極右勢力との結びつきが指摘されており、徐々に移民排斥などの右翼的な主張を強め、難民危機をきっかけに躍進した。国政でも第3党の地位を占め、極右台頭への警戒感が強まっていた。

首相を退陣するケメリヒ氏はリベラル政党、自由民主党に所属し、AfDの党員ではない。首相選出の過程でAfDと密約などを結んでいたわけではないと主張している。ただ、AfDの票がそろってケメリヒ氏に流れ、1票差での首相選出の決定打となったことは事実で、疑惑の目が注がれていた。

即時辞任を――。ベルリンでは5日夜、こんなプラカードを掲げるデモに多くの市民が参加した。左派系の政治家だけでなく、州議会でケメリヒ氏に投票した国政与党、キリスト教民主同盟(CDU)の幹部らも批判の飛び火を恐れて相次いで同氏を非難。当初は勝利を祝福していた自由民主党幹部も態度を翻したことで、ケメリヒ氏の進退は窮まっていた。

チューリンゲンの政党は我々の協力なしでは過半数を集めることができない――。ケメリヒ氏に敗れた左派党のラメロウ前州首相は1930年のヒトラーの発言を引用し、AfDの力を借りたケメリヒ氏を批判した。90年前にナチスが初めて州政府入りし、その後の政権獲得の足がかりを得たのもチューリンゲンだった。

戦後ドイツはナチスの台頭を再び許さないための努力を重ねてきた。得票率5%未満の小政党が議席を獲得できず、連邦政府の首相退陣に高いハードルを設けたのも、政治が不安定になれば、極右に付け入る隙を与えかねないためだ。政権樹立に極右を関与させないという暗黙の了解が破られたと多くの市民が感じたことが、猛烈なケメリヒ批判につながった。

メルケル首相の「許せない」との一声もあって事態は収束に向かったが、ドイツの民主主義の置かれた状況は厳しい。かつてそれぞれ4割を超えていた二大政党の支持率は、足元では両党あわせてやっと4割を超える程度にとどまる。

二大政党の退潮と極右の台頭で、極右抜きで多数派を形成する連立協議の難易度は増している。他党を出し抜いて政権を獲得したいという野心が政治家にある限り、今回のような事態が再び起こる可能性は消えない。

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