新型コロナ、発症すると…インフルエンザに近く?

2020/2/7 11:00
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中国の湖北省武漢市で発生した新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからない中、謎の多い感染症の姿が見えてきた。日本や米国、中国などの専門家が発症した患者の経過を明らかにし始め、症状の特徴や治療薬候補の効果の可能性などがわかってきた。症状は重症急性呼吸器症候群(SARS)などと比べると比較的軽く、風邪やインフルエンザに近い症状が多いなどの見方が浮上している。

新型コロナウイルスに感染して発症した患者の様子がわかってきた=国立感染症研究所提供

新型コロナウイルスに感染して発症した患者の様子がわかってきた=国立感染症研究所提供

日本感染症学会は、新型コロナウイルスに感染して発症し、国立国際医療研究センターで治療した3人の治療経過や分析結果を公表した。中国湖南省在住の中国人は、せきや発熱、悪寒などが症状があった。レントゲンやコンピューター断層撮影装置(CT)で肺に影が見つかり、新型コロナウイルスによる肺炎と診断。一時、軽い呼吸困難などに陥り、エイズウイルス(HIV)薬を投与した。その後、呼吸の状態悪化などは起こらずに、入院5日目に体温が37度まで低下。酸素吸入もいらなくなった。

残りの2人はいずれも武漢市に滞在歴がある日本人。1人は、微熱が続いたが肺炎はなく回復、もう1人は肺炎と診断されたものの呼吸困難などは見られなかった。3人とも重症ではないと指摘している。

米疾病対策センターによると、新型コロナウイルスによる肺炎の主な症状は発熱やせき、息切れだ。米国初の患者もせきや発熱から肺炎を発症、12日目に症状が改善したと報告されている。

国立感染症研究所インフルエンザウイルス研究センターの長谷川秀樹センター長は「初期の症状はインフルエンザと近い」と指摘する。大阪大学の朝野和典教授も「インフルエンザや風邪と区別がつきにくい」とした上で「鼻水やのどの痛みは少なく、発熱とせきが多いようだ」と話す。

海外でも報告例が相次ぐ。武漢市ジンインタン病院は医学誌「ランセット」に1月末に掲載した論文で、同月1~20日に確認した99人の患者を25日まで観察した。8割強が発熱とせきを訴えたほか、31人に息切れ、11人に筋肉痛が出た。下痢は2人だった。

感染研の長谷川氏は「新型コロナウイルスは、比較的早い段階で肺炎や呼吸器症状が出るようだ」と話す。SARSや中東呼吸器症候群(MERS=マーズ)で出た下痢は「今のところ少ない」とみる。

ベトナムのホーチミン市パスツール研究所などは1月末に、米臨床医学誌の「ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」に論文を発表。武漢市からベトナムへ来た65歳の男性の新型コロナウイルス感染を報告。肺炎の状態を確認、酸素補給などの措置を受けて回復した。この男性は心臓病などの慢性疾患を持っていた。

東京医療保健大学の菅原えりさ教授は「抗がん剤の投与を受けたり、既に他の病気があったりした人は重症化しかねない」と重症になりやすい人の条件を指摘する。ベトナムや武漢市の事例の一部がこれにあたる。糖尿病や高血圧などを持っていた。

一方で、報告されている範囲で重症化する人に共通する確実な特徴はなく、神戸大学の中澤港教授は「どういう人が肺炎へと移行し重症化するのかまだわかっていない」との見方を示す。東京慈恵会医科大学の浦島充佳教授は「重症化しているのは高齢者や基礎疾患を持つ人ばかりではなさそうだ」と話す。大気汚染や不十分な医療体制なども重症化の要因とみる。

治療法について、国立感染症研究所の感染症疫学センター・鈴木基センター長は「新型コロナウイルスをやっつける直接の治療法は現段階ではない」とし、基本はウイルスが体から自然に排除されるのを待つ対症療法だという。具体的には解熱剤や、せき止めなどの薬を服用する。ただ、新型コロナウイルスの感染で免疫が弱くなりやすく、細菌が感染する二次感染などで肺炎が重くなる可能性がある。その場合は、「普通の肺炎と同様に、抗生物質で肺のダメージを抑える治療法が有効」と話す。

海外を中心にウイルス自体をたたく抗ウイルス薬も積極的に投与している。武漢市のジンインタン病院の論文では99人の患者のほとんどが抗生物質の投与を受けたほか、75人がインフルエンザ治療薬の「オセルタミビル」やHIV薬の「リトナビル」などの抗ウイルス薬を使った。31人が退院したが、11人が亡くなった。論文中では「重症の患者を早期に発見し、タイムリーな治療が重要」と指摘している。薬の効果を評価するのは時期尚早のようだ。

症状が出ない人も含めて人から人への感染により、新型コロナウイルスの遺伝子が変異し、感染力が高まる可能性はある。今後の発症後の症状の変化について神戸大の中澤教授は「(症状の重さを左右する)ウイルスの毒性は高まる可能性はあり得る」としながらも「感染力が強まれば、毒性は弱まるだろう」と話す。

(草塩拓郎、猪俣里美、岩井淳哉、出村政彬、スレヴィン大浜華)

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