ドイツ、極右支持で初の州首相 政界に衝撃
旧東ドイツのチューリンゲン州で選出

ドイツ政局
2020/2/6 19:00
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【ベルリン=石川潤】旧東ドイツのチューリンゲン州で5日、リベラル政党、自由民主党のケメリヒ氏が新しい首相に選ばれた。第2党の極右、ドイツのための選択肢(AfD)の後押しで、現職候補に1票差で勝利した。AfDの支持で誕生した初めての州首相で、独政界では戦後規範の「決壊」(公共放送ARD)と衝撃が広がる。

独チューリンゲン州の首相に選ばれたケメリヒ氏=ロイター

連邦制のドイツでは全国に16ある州が教育や警察などの分野で大きな権限を持つ。各州が議院内閣制のような仕組みをとり、州首相は内閣を組織する行政トップ。ドイツ政界での影響力も大きい。

チューリンゲン州の首相を選ぶ投票は左派党の現職が首位だったが、過半数に届かなかった。3回目の投票でケメリヒ氏が名乗りをあげ、国政第1党のキリスト教民主同盟(CDU)、AfDの議員の支持で勝利した。ケメリヒ氏はAfDと事前の密約はないと説明したが、中道左派、ドイツ社会民主党(SPD)のショルツ財務相はツイッターで「偶然ではない。八百長だ」と批判した。

同州でAfDを率いるヘッケ氏は党内でも右翼色の強い指導者で、2017年にベルリン中心部のホロコースト記念碑を「恥辱の記念碑」と呼び批判を浴びた。そのヘッケ氏の力を借りて誕生した州首相には、自由民主党の内部からも「受け入れられず、とても耐えられない」(シュトラックツィメルマン連邦議員)との声が上がる。

ケメリヒ氏はAfDと今後連立を組むことはなく、少数与党内閣で政権運営する考えを表明した。だが、メルケル首相は6日「許せない。民主主義にとってひどい日になった」と表明。州首相辞任や州議会解散を求める声が高まっている。

ドイツ全体でのAfDの支持率は10%強で、旧東独でも20%程度にとどまる。低くはない水準だが、政権を獲得し強い影響力を発揮するまでには至っていない。ドイツの主要政党はこれまで連立交渉の相手からAfDを除外することで、影響力拡大を防いできた。

だが、CDU、SPDという二大政党の支持率が低迷し、多数派の形成が難しくなって連立交渉に時間がかかるようになっている。一定の勢力を握るAfDとの連携は存在感を認め、影響力拡大に道を開く「禁断の果実」といえる。

メルケル政権はCDUとSPDの連立政権だが、中道左派のSPDはケメリヒ氏を支持したCDUの姿勢をただす構えだ。極右の手を借りずに粘り強く多数派を形成する努力を重ねていけるのか、既存政党の胆力が問われている局面だ。

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