不登校→フォロワー70万 モデル「よしあき」の正解

現役高校生モデル「よしあき」をご存じだろうか。いじめをきっかけに小4で不登校、中2まで引きこもり、自殺未遂まで追い込まれたが、今やSNS(交流サイト)のフォロワーが70万人を超える人気で、テレビ・雑誌などで幅広く活躍中だ。自らの経験をつづった「友達ゼロで不登校だった僕が世界一ハッピーな高校生になれたわけ」は出版から3週間で2回増刷と注目度は高まるばかり。よしあきの何がそれほどまで若者をひき付けるのか。
よしあきは19歳。1年留年して今も現役の高校生だ。モデルとして東京ガールズコレクションなどで活躍、2019年SHIBUYA109lab.トレンド大賞ヒト部門で1位となった。
華々しく活躍するよしあきだが、ここに至る人生、実は苦難の連続だった。女性的な容姿やふるまいが原因で始まったいじめ、そこから中2までの不登校、引きこもり、その間の家庭内暴力や自殺未遂……。そんなつらい時代の悩める心情をさらけ出した著書は、10代、20代のハートをがっちりつかんだ。

2019年12月26日に初版1万部で発行。11日目に5千部増刷、22日目にさらに5千部増刷と、今の出版業界では異例ともいえるペースで読者が広がっている。今まさに不登校や引きこもりの渦中にある若者、その親たちから、共感や感謝の思いを伝えるメッセージが後を絶たない。
自著の中でよしあきが強調するのが「今の自分のままでいいんだよ」というメッセージだ。自身、不登校のとき、「学校に行かないと普通の生活に戻れない。このままではダメだ」という、あせりの気持ちにさいなまれた。学校に通うことが正解であり、普通でなくなってしまった自分はこの先、どうなってしまうのか。そんな不安が鬱積し、爆発すると、家具を破壊し、母親にまで暴力をふるった。そんな昔の自分に、今のよしあきは、こう語りかける。「学校行かなくたっていいんだよ。今の幸福な僕があるのは、不登校のおかげだから」
悩めるよしあきを優しく包んだのが、自治体の家庭支援センターから派遣された相談員や、フリースクールの先生たちだった。優しい大人たちは、よしあきに「あせらなくていい。今は休憩が必要な時期なんだから」、「何にでも終わりがある。つらいことも苦しいことも、いつか必ず終わる」と語りかけた。徐々に心の安定を取り戻したよしあきは、できることから始めようと再起動する。

まず早寝早起きだ。夜中に起きていると、どうしても考え方が後ろ向きになる。引きこもりから外へ出るには体力がいると聞き、腕立てと腹筋を始めた。外へ向かって一歩踏み出し、原宿デビュー、高校受験。やがてモデルやタレントして活躍するようになり、「今の人生、誰にも渡したくない」と思えるほど、幸福な毎日を生きている。
よしあきは思う。「万人に共通する正解なんてない。みんなそれぞれの正解があり、それを見つければ、人生は最高にハッピーだ」。正解をずっと追い求めていたら、「今ごろは、どこにでもいる大学生になっていただろうな」と思う。モデルやタレントとして輝く今の自分があるのは、不登校や引きこもりを経て、自分にとっての正解にたどり着いたからだ。
今回の自著では、これまでの人生とその間の揺れる心情を世の中に伝えることができた。次の夢は自分が今、好きなこと、関心のあることを伝えたい。例えばスキンケア、香水、ファッションなどだ。有名になっても、SNSのフォロワーが増えても、自分は自分、変わらない。地に足が着いている。そんなよしあきを応援したい。
(編集委員 鈴木亮)
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