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米貿易赤字3年ぶり縮小 19年、関税上げで対中17%減

【ワシントン=鳳山太成】米商務省が5日発表した2019年の貿易統計(通関ベース)によると、モノの貿易赤字は8529億4900万ドル(約94兆円)と前年比2.5%減った。減少は16年以来、3年ぶり。関税引き上げの影響で中国からの輸入にブレーキがかかり、対中赤字も3年ぶりに縮小した。貿易赤字が縮小するのはトランプ政権の発足後初めて。

ただ高関税を避けるため中国以外からの代替調達も進んでおり、足元の傾向が持続するかは不透明だ。

19年は米経済が緩やかに減速し、輸入が1.7%減った。輸出も1.2%低下した。シェール革命により中東などからの原油輸入が減り、米国産原油の輸出が伸びた影響も大きい。18年の貿易赤字は12年ぶりに過去最大を更新したが、19年は一転して縮小した。ただ依然として高水準にある。

全体の約半分を占めていた対中赤字も17.6%減った。18年7月に米中貿易戦争が始まった当初は中国の報復関税の影響が先に出て、大豆などの対中輸出が落ち込んだ。対中輸入で高関税を避けるための駆け込みも発生し、18年の赤字は過去最大を記録していた。19年も輸出は11.3%減ったが、輸入の減少幅(16.2%)が上回った。

一方、企業のサプライチェーン(供給網)見直しを受け、対メキシコの貿易赤字は26.2%拡大して過去最大を記録した。対ベトナムは4割も増えた。関税を上乗せしたコンピューター部品は19年1~11月に対中輸入が7割減る一方、メキシコやベトナムからの輸入が2~3倍に膨らんだ。家具類も対中輸入が3割減る代わりにメキシコは1割、ベトナムは3割弱増えた。19年の対日赤字も2.7%拡大した。

輸出と輸入を合わせた貿易量でみると、19年の最大相手国は中国からメキシコに交代した。

米ピーターソン国際経済研究所のゲイリー・ハフバウアー氏は20年について「貿易赤字全体がさらに大きく減るとはみていないが、中国との2国間ではさらに減る」とみる。米政権は今後も対中関税の大部分を維持するため輸入は増えにくい。中国は米国産品の購入を2年で2000億ドル増やす約束だが、新型コロナウイルスの影響で需要が落ち込めば輸出の伸びが限られる可能性もある。

トランプ大統領は11月の大統領選を前に「貿易赤字の削減」という公約を実現した形になる。「中国市場を開放させた関税政策は正しい」(メリーランド大のピーター・モリシ名誉教授)との評価もある一方、米連邦準備理事会(FRB)の研究者が「関税は米製造業の保護より雇用減に効いた」と指摘する論文をまとめるなど負の影響を指摘する声が多い。

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