ZHD、ネット通販首位へ難路

ヤフーを傘下に持つZホールディングス(HD)は5日、2019年4~12月期の連結決算を発表した。ZOZOの買収など強化を進めるインターネット通販は取扱高の伸びが実質7%増にとどまった。スマートフォン決済で成功した大型の還元キャンペーンも期待したほどの効果が出ていない。複数のサービスを連携して顧客を囲い込む競争が激化するなか、川辺健太郎社長が掲げる「ネット通販1位」への道はまだ見えていない。
4~12月期の純利益(国際会計基準)は前年同期比7%増の750億円となった。昨年11月に子会社化したZOZOの利益を2カ月分取り込んだことが大きい。
そのZOZO買収は知名度の高い「ゾゾタウン」を取り込み、電子商取引(EC)で先行するアマゾンジャパン(東京・目黒)と楽天の追撃体制を整えるのが狙いだったが、思惑通りに進んでいないこともうかがえる。

10~12月のショッピング事業の取扱高は37%増の2952億円と伸びたが、ZOZO子会社化の影響を除くと伸び率は7%にとどまる。「小売り全体が消費増税の影響を受けたためで(減速は)一時的なものだ」(坂上亮介最高財務責任者=CFO)と説明したが、ZOZO買収前の期初に掲げていた取扱高2割増の目標には届かなかった。
ZOZO買収とともにネット通販強化のため昨年10月に立ち上げた「PayPay(ペイペイ)モール」では11月から支払額の最大2割、総額100億円を還元するキャンペーンを始めた。スマホ決済「ペイペイ」が同様の施策によって利用者数を大幅に増やした再来を狙ったとみられる。
ペイペイモールは6万店前後が出店する既存の「ヤフー!ショッピング」から出店者を選抜するなどして、付加価値を高めたことが特徴だった。開設時から店舗数を200以上増やし、12月末で785店まで増えたが、消費者からすると欲しい商品が取り扱われているかわかりにくく利便性が劣っている。
まだ開設当初で認知度が低かったこともあり、結果として還元キャンペーン期間を当初予定の1月末までから3月末までに2カ月延長することになった。業界では「思ったより初速が伸びていないのではないか」との見方も出ている。
ZHDはペイペイを還元策に使い、親会社のソフトバンクのスマホ利用者にポイントを多く付与するなど、通信からネット通販、決済と多様なサービスを抱えるグループ連携が強みだった。ただ、楽天が携帯電話事業に参入。NTTドコモはアマゾンの会員サービスの年会費を含んだ料金プランを始めた。
10~12月に取扱高が6%減となった「ヤフオク!」やフリマアプリ「ペイペイフリマ」などのリユース事業では、ライバルのメルカリが4日にNTTドコモとの業務提携を発表するなど、サービスをまたいだ競争は一段と厳しさを増している。
ZHDにとって、ネット通販を中心とした国内の基盤固めは喫緊の課題だが、財務の余力は少なくなっている。ZOZOの買収などで4~12月のフリーキャッシュフロー(純現金収支)は4000億円を超える赤字。実質無借金だった財務も1兆円を超える有利子負債を抱えるようになった。

5日には20年3月期の売上収益見通しを200億~400億円上方修正する一方で、純利益は20億~50億円下方修正した。還元策などペイペイの積極投資が続いており、収益を圧迫している。投資余力が限られる中、ペイペイモールをテコ入れするには、キャンペーン以外にもアプリの利便性向上といった地道な改修が必要になってくる。
ZHDが決めたLINEとの統合は、巨大な海外勢への対抗策として東南アジアなど海外に打って出る戦略だ。その一方で足場である日本市場は、アマゾンに加えグーグルなど米IT(情報技術)大手が存在感を高めている。グループ総力戦の効果を発揮して、まずは国内での戦いに勝ち抜かなければグローバルで生き残る活路も見えてこない。(斎藤正弘、桜井芳野)

衣料品通販サイト大手のZOZOが9月12日、ソフトバンク子会社のヤフーの傘下に入る意向を発表した。創業者の前沢友作氏は同日付で社長を退任し経営から退く。前沢氏はユニクロやZARAに並ぶ世界規模のアパレル企業を目指したが、採寸用スーツの苦戦や相次ぐ有力ブランドの撤退など誤算が続いた。創業から約20年。月周回旅行やプロ野球への関心などの発言が注目を集めた前沢氏は第二の人生を歩む。