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外国人騎手に世代交代の兆し 短期免許でも存在感

2月1日もメインの白富士ステークスを勝つなど、1日5勝と活躍したマーフィー(JRA提供)

今年も開幕から1カ月が過ぎた中央競馬で、外国人騎手の活躍は相変わらずだ。ただ、同じ外国人でも世代交代の兆しがみえる。昨年から今年にかけて、20代半ばの新鋭が一気に台頭した。中央生え抜きの若手がベテランの壁を崩せないのを尻目に、年間3カ月という短期免許の制約の下で、国内外のG1で存在感をみせている。

英の次代エース、日本でも荒稼ぎ

今年5週の開催を終えて、勝利数首位に立っているのはオイシン・マーフィー(24、英国)。マーフィーは2日の東京で今年1回目の短期免許期間を終えたが、11日間騎乗して27勝を挙げた。1月6日に中山で1日6勝をマークすると、2月1日の東京初日も5勝。2位の川田将雅(34)に4勝差をつけた。

マーフィーは2018年12月に初来日した。昨年は1月だけで17勝し、G3の根岸Sをコパノキッキングで勝ち重賞初勝利。11月に再来日すると、ジャパンC(東京・G1)のスワーヴリチャード(引退)で果敢に馬場の内を突いて抜け出し、待望のG1初勝利を手にした。昨年は中央33勝だが、今秋も再来日して勝ち星を伸ばしそうだ。

マーフィーは英国でも次代のスター候補として早くから注目され、17年にフランスでG1初勝利を挙げると、18年にはロアリングライオンとのコンビで夏から秋にかけてG1を4連勝。同馬を欧州年度代表馬(カルティエ賞)選出に導いた。昨年は168勝を挙げて初の英国最多勝を達成し勢いに乗る。

初来日時の騎乗ぶりが国内の関係者に認められ、海外遠征した日本馬を任されるようにもなった。4月下旬のクイーンエリザベス2世C(香港・シャティン)はリスグラシューで3着。夏からはディアドラに騎乗し、8月の英G1、ナッソーステークス(グッドウッド)で優勝。日本調教馬に19年ぶりの英国G1勝利をもたらした。結果は出なかったが、シュヴァルグラン(引退)でも「キングジョージ」、インターナショナルステークスの両G1に参戦した。

2月2日にひとまず国内騎乗を終えたマーフィーは「2着になった場合は、自分に何ができたのかをいつも考え、うまくなりたいと思ってきた。それがジャパンカップ優勝という結果につながってうれしい」と振り返り、「日本(中央)はレースが土日だけ。ストレスが少ない」と話した。

リスグラシューの大変身を演出

1月27日の日本中央競馬会(JRA)賞表彰式。主役の年度代表馬・リスグラシューの主戦騎手は欠席した。宝塚記念からオーストラリア伝統のG1・コックスプレート(ムーニーバレー)、有馬記念と3連勝に導いたダミアン・レーン(26、豪州)が、地元を離れられなかったのだ。

レーンは昨年4月下旬に初来日。2日目の東京で4勝し、翌4月29日に新潟大賞典(G3)のメールドグラースで重賞初制覇。5月12日にはヴィクトリアマイルのノームコアでG1初勝利を飾った。日本ダービーで、騎乗停止となったクリストフ・ルメール(40)に替わり、1番人気のサートゥルナーリアにも乗った(4着)。

本来、短期免許期間は最大3カ月だが、初来日の際は2カ月しか申請できないため、宝塚記念の週が最後だったが、ここでリスグラシューと初コンビを組んだのが転機となった。ライバルは同年齢(当時)のG1勝ち馬4頭というメンバー構成。1番人気の17年菊花賞馬キセキが予想通り逃げたが、レーンは最外の12番枠から好スタートを切ったパートナーを2番手に。2歳時の初勝利を除けば、差す形でレースを運んできた馬に、牡馬相手のG1で先行策を取らせたこと自体が驚きだったが、直線で早めに抜け出すと、差は開く一方。結局、2着キセキに3馬身差の圧勝。3~5着も5歳のG1馬だった。

2つ目のG1勝利は、さらなる機会をもたらした。関係者は10月の豪G1、コックスプレート参戦を決定。同レースに宝塚記念優勝馬が出走して勝った場合、300万豪ドルの1着賞金に加えて200万豪ドルのボーナスもつき、合計で約3億8000万円を手にできる。自身3度目の遠征に臨んだリスグラシューは、レーンとのコンビで後方から豪快に差し切り、3つ目のG1を制覇。この後、リスグラシュー陣営は帰国初戦の有馬記念を最後に引退すると表明した。

有馬記念を制し、記念写真に納まるレーン騎手(右)とリスグラシュー(19年12月)=共同

レーンは免許期間を使い切っていたが、JRAは「同一年に同じ馬でG1を2勝した外国人騎手」が、年内の他のG1騎乗を希望した場合、当日限りの免許を発給するルールを置いていた。03年にミルコ・デムーロ(41)がネオユニヴァースで3歳二冠を制した後、菊花賞でコンビ継続の道を開くために新設されたルールで、その後は適用例がなかった。「G1で2勝」は国内を想定していたはずで、「国内外2勝」は前例がなかったが、関係者の照会にJRAはゴーサインを出した。

有馬記念での圧勝劇は今も記憶に新しい。内寄りの6番枠を生かし、ハイペースを読んで小回りコースなのに最後の最後まで待機し、直線入り口で真横に動いたかと思わせるような進路取りで外に出し、瞬時に後続をちぎり捨てた。宝塚記念での先行策とは対照的な作戦は、若さに似合わぬ引き出しの多さの表れ。とはいえ15歳でデビューし、20歳でのG1初勝利から既にG1勝ちが20を数える歴戦の名手を、年齢だけではかるのは無意味であろう。

20のG1勝利には、日本から移籍したトーセンスターダム(現種牡馬)の2勝も含まれる。06年に国民的行事であるメルボルンカップで、日本のデルタブルース、ポップロックが1、2着を占めたことが、日本の競馬に関心を持つ契機になったといい、今後も縁は続きそうだ。

「秋季特定期間」免許は狭き門

JRAの外国人短期免許制度は1994年に新設され、M・デムーロとルメールは同制度で来日を繰り返した末、15年に通年免許を取得。日本に腰を据えた。2人が通年免許を得た後、JRAは短期免許の申請条件を厳格化した。国内勢、特に若手の騎乗機会確保が目的で、従来は英仏や北米なら、過去2シーズンの一方で英仏は10位、北米は30位(英仏は勝利数、北米は獲得賞金)以内が条件だったが、現在は5位に。香港やアイルランド、豪州の主要地域は3位以内、ドイツ、ニュージーランドは1位が申請の条件だが、これとは別に主要G1勝利を重ねた場合も申請できる。

数年前まで、短期免許組のツートップは、ライアン・ムーア(36、英)とジョン・モレイラ(36、ブラジル)だった。ムーアは史上最年少の23歳で英国リーディングを獲得しており、日本ではスノーフェアリーで10、11年のエリザベス女王杯を連覇。12年からは毎年、短期免許で来日しており、既にJRAで通算129勝を数える。

モレイラは15~17年に夏の札幌限定で来日。124戦38勝(勝率30.6%)という驚異的な成績を残し、18年10月にJRAの免許試験を受けたが不合格。同年夏から秋にかけて76勝を挙げたのを最後に、日本には来ていない。

ムーアは近年、滞日期間が短く、国内での勝ち星も減り気味。替わってマーフィーやレーン、18年のマイルチャンピオンシップ(ステルヴィオ)で国内初G1を勝ったウィリアム・ビュイック(31、ノルウェー=拠点は英国)らの活躍が目立つ。起用が多いのはノーザンファーム(NF)で、世界にアンテナを張り、乗れる騎手を探す。日本の高額賞金は乗る側の海外勢にも魅力だ。

「日本に恋」JRA入り目指す仏女性

例年、欧州がシーズンオフとなる秋以降は、短期免許の申請者が多く、JRAも「秋季特定期間」と規定し、同時に5人の上限を超えると審査を行う。昨秋はビュイック、マーフィー、ムーアに加えて、大物2人が来た。一人は競馬界の生けるレジェンド、ランフランコ・デットーリ(49、イタリア)で、11年の日本ダービー以来、8年半ぶりの来日となった。わずか2週だったが、後輩のM・デムーロの京都の自宅に滞在、注目を集めた。

仏の名手クリストフ・スミヨン(38、ベルギー)も5年ぶりに来た。これで5人の枠が埋まり、ミルコの弟クリスチャン・デムーロ(27)が押し出された。クリスチャンはフランスに拠点を置き、過去2年は6、4位だが、それでも来られない。実績が甲乙つけ難い場合、「日本での成績や、制裁の少なさで判断する」とJRAは説明する。

実績では遠く及ばないが、日本に腰を据えたいと熱望する女性騎手もいる。昨夏のワールド・オールスタージョッキーシリーズ(WASJ=札幌)で初来日したミカエル・ミシェル(24、フランス)。WASJ第3戦をスワーヴアラミスで快勝した後、「日本に恋をした」と繰り返し、自国で日本語のレッスンも始めた。11月はジャパンCに合わせて東京競馬場を訪れ、今年1月27日からは地方競馬の短期免許を取得し、南関東競馬で騎乗。目を引くルックスも手伝って、大きな注目を集めている。

地方競馬の短期免許を取得し、パドックで記念撮影するミシェル騎手(川崎市の川崎競馬場)=共同

ミシェルは14年デビューで通算1446戦116勝。18年の72勝が自己最多で、当時が仏12位。この水準ではJRAの短期免許申請への道は遠い。だが、豪州でキャリアを積んだ逆輸入騎手・藤井勘一郎(36)のように、中央で実績がなくても通年免許試験は受験できる。外国人に対しては、英語での受験の道も開かれている。2月からは地方の女性騎手のシリーズに急きょ参戦するなど、日本で経験を重ね、長期的に準備を進めていく構えだ。

(野元賢一)

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