福光屋、日本酒の化粧品 「食べられる」天然成分
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2020/2/6 2:00
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酒造会社の福光屋(金沢市)は、発酵技術を強みに美容分野に力を入れている。酒蔵が培った経験を生かし、手掛ける化粧品は全て天然由来成分のスキンケアにこだわる。酵母を独自開発し、ノンアルコールの化粧品も生み出した。近年は体内からの美容も意識し、発酵食品の研究開発も熱心だ。

日本酒を使ったスキンケア化粧品の開発に取り組む松井圭三常務

日本酒を使ったスキンケア化粧品の開発に取り組む松井圭三常務

化粧品のラインアップはメイク落としからローション、せっけん、日焼け止めと多岐にわたる。主成分はコメと水で、香料や着色料は使わない。石油由来の防腐剤や界面活性剤も使わず、全てを口に入れても問題ない「食べられる」天然の成分にこだわっている。子供が誤って口に入れても安心だ。

独自の商品がアルコールを含まない「アミノリセ」シリーズだ。アルコールで肌が負けたり、赤らんだりする人でも使える。酒造りの研究開発で偶然生まれた、アルコールは出さないがアミノ酸だけを生み出す酵母が役に立った。製法は福光屋が特許を所有し、化粧品事業に取り組む他の酒造会社の追随を許さない。

「体の内から」の美容にも力を入れ、発酵食品も拡充している。2013年には能登地方の伝統的な「なれずし」から得られた乳酸菌を使った飲料を発売。酒を腐らせ、天敵ともいえる乳酸菌にあえて着目した。18年にはラインアップを増やし、5種の乳酸菌飲料をそろえた。

化粧品開発のきっかけは、冬の酒造りのシーズンに季節労働者として働く杜氏(とうじ)だった。杜氏は普段は海で漁をしており、太陽に焼けて肌も荒れていた。ところが酒造りを終える頃には、肌につやが戻り、手がきれいになっていた。

「日本酒はスキンケアにぴったりなのでは」。そう考え、商品化に向けた研究を始めたのが松井圭三常務だった。松井常務は社員と2人がかりで、研究開発の過程で造った約600種類の日本酒を1本ずつ使って顔を洗った。アミノ酸が多いと保湿に優れ、糖が多いとべたつくことが分かり、肌には純米酒が適していると判断した。

1990年に売り出されたのが「純米酒すっぴん」(200ミリリットル入り、500円、税別)。純米酒の原酒で、香料や保存料もない「飲める化粧品」が売りだ。すっぴんを手始めに本格的に化粧品開発を始め、「すっぴんイズム」などのシリーズを発売した。

同社の2019年6月期の売上高は約30億円。うち20~25%を占める化粧品事業は、今や経営にとって不可欠な稼ぎ柱に成長した。創業1625年の金沢で最も長い歴史を誇る酒蔵は、発酵の可能性を信じて新商品の開発に取り組み続けている。

(前田悠太)

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