満身創意(岡崎慎司)

フォローする

昨日までの現実受け流し、新たな現実受け入れる

2020/2/5 17:00
保存
共有
印刷
その他

前線で相手守備陣にプレッシャーをかけ続ける。スプリント数は誰よりも多い。そうやってチームに貢献している自負はある。それでも、ベンチスタートや先発しても途中交代が続くと「自分の仕事が評価されていない」と落胆する。先触れもなく、監督からの評価が変化するのは、よくあることとはいえ。

「ボールを持ち、強いインパクトを残すプレーやゴールが大事だ」と思うけれど、「サッカーはそれだけじゃない」という信念もある。若い頃より経験を積んだせいか、いろいろと考える時間が長くなる。気がつくと「僕はあれもやっている。これもやった」などと言い訳がましいへ理屈を並べていて、「いやいや、そうじゃないだろう」と否定する。そんな葛藤が続く。

1月25日のルーゴ戦の前半、攻め込むウエスカの岡崎(右)=共同

1月25日のルーゴ戦の前半、攻め込むウエスカの岡崎(右)=共同

ウエスカの監督は英語が、僕はスペイン語が話せない。それでお互い深い話ができないが、もし、できたら、理解を求める言葉をあれこれ重ねてしまうかもしれない。そんなふうに弁護に走る自分を、僕は情けない男だと感じるだろう。それは、ただの言い訳にすぎないから。

言葉ではなくプレーで、結果で立場や評価を変える。それはこの仕事の醍醐味だ。言い訳無用の場所にいることは厳しいが、現実と向き合うしかない環境にいたいから今ここにいる。それは僕が海外にいる理由の一つでもある。

途中交代を命じられた後、監督が「良かった」と言ってくれても、その用兵によって監督の真意を知る。言葉ではなく、采配がすべてだ。

「試合中に引っ込めても戦況に影響を及ぼさないという評価しかもらえていない」と実感すれば、腹立たしく、悔しさも募る。でも、この感情に揺さぶられたくはない。英レスター時代にケガをしたとき、強い怒りを抱きすぎていたことに気づいたからだ。

滝川二高を卒業し、清水でプロになったものの、試合に絡めない僕に「しっかり練習し、実力をつければ、どこへ行ってもやれるようになる。見ている人は必ずいる」と言ってくれた先輩がいる。この言葉は今も僕の支えだ。

試合に出たい、試合に勝ちたいという欲が出すぎるとイライラ、ストレスは増える。大事なのは監督や同僚や競争相手のことではなく、「うまくなりたい」「サッカーが好きだ」という根底にあるべきものにフォーカスすること。1回の練習、1つのセッションで「ここでボールを受けられるようになった。次はドリブルしてみよう」とチャレンジし続けることでしか、うまくはなれない。

「受け流す能力が鍵になる」――。最近お会いした精神科の先生が言っていた。「岡崎さんはそれができているんじゃないですか」と。練習へ行けば、昨日までの現実を受け流せる。そして、新たな現実を受け入れられる。

(ウエスカ所属)

満身創意(岡崎慎司)をMyニュースでまとめ読み
フォローする

保存
共有
印刷
その他

サッカーのコラム

電子版トップスポーツトップ

満身創意(岡崎慎司) 一覧

フォローする
スペインリーグもクラブでの練習が再開し始めた(11日、練習するアトレチコ・マドリードの選手たち)=ロイターロイター

 サッカーのない2カ月間、僕は結構忙しい日々を過ごしていた。午前中に自主トレーニングをし、午後は休校中でオンライン学習をする子供たちの勉強を見る。家にいるという環境のせいか、2人の息子はなかなか集中で …続き (5/13)

日本サッカー協会のユーチューブ公式チャンネル「JFATV」にアップされた岡崎(左)と香川が登場する動画の一場面(C)JFA=共同共同

 3月23日、サッカーのスペインリーグは新型コロナウイルス感染拡大の影響により、無期限延期を発表した。
 3月12日に一度は2節分の延期を決めていたが、13日にサンチェス首相が国家非常事態を宣言、外出な …続き (4/1)

ラヨ・バリェカノ戦の後半、攻め込む岡崎(2月23日)=共同共同

 2月8日、アウェーのジローナ戦。僕は54分から出場していた。退場者を出したウエスカは劣勢ではあったが、スコアは0―0だった。
 前線で相手ボールを奪った僕は、すぐさま横にいた味方にボールを預ける。そし …続き (3/4)

ハイライト・スポーツ

[PR]