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昨日までの現実受け流し、新たな現実受け入れる

前線で相手守備陣にプレッシャーをかけ続ける。スプリント数は誰よりも多い。そうやってチームに貢献している自負はある。それでも、ベンチスタートや先発しても途中交代が続くと「自分の仕事が評価されていない」と落胆する。先触れもなく、監督からの評価が変化するのは、よくあることとはいえ。

「ボールを持ち、強いインパクトを残すプレーやゴールが大事だ」と思うけれど、「サッカーはそれだけじゃない」という信念もある。若い頃より経験を積んだせいか、いろいろと考える時間が長くなる。気がつくと「僕はあれもやっている。これもやった」などと言い訳がましいへ理屈を並べていて、「いやいや、そうじゃないだろう」と否定する。そんな葛藤が続く。

1月25日のルーゴ戦の前半、攻め込むウエスカの岡崎(右)=共同

ウエスカの監督は英語が、僕はスペイン語が話せない。それでお互い深い話ができないが、もし、できたら、理解を求める言葉をあれこれ重ねてしまうかもしれない。そんなふうに弁護に走る自分を、僕は情けない男だと感じるだろう。それは、ただの言い訳にすぎないから。

言葉ではなくプレーで、結果で立場や評価を変える。それはこの仕事の醍醐味だ。言い訳無用の場所にいることは厳しいが、現実と向き合うしかない環境にいたいから今ここにいる。それは僕が海外にいる理由の一つでもある。

途中交代を命じられた後、監督が「良かった」と言ってくれても、その用兵によって監督の真意を知る。言葉ではなく、采配がすべてだ。

「試合中に引っ込めても戦況に影響を及ぼさないという評価しかもらえていない」と実感すれば、腹立たしく、悔しさも募る。でも、この感情に揺さぶられたくはない。英レスター時代にケガをしたとき、強い怒りを抱きすぎていたことに気づいたからだ。

滝川二高を卒業し、清水でプロになったものの、試合に絡めない僕に「しっかり練習し、実力をつければ、どこへ行ってもやれるようになる。見ている人は必ずいる」と言ってくれた先輩がいる。この言葉は今も僕の支えだ。

試合に出たい、試合に勝ちたいという欲が出すぎるとイライラ、ストレスは増える。大事なのは監督や同僚や競争相手のことではなく、「うまくなりたい」「サッカーが好きだ」という根底にあるべきものにフォーカスすること。1回の練習、1つのセッションで「ここでボールを受けられるようになった。次はドリブルしてみよう」とチャレンジし続けることでしか、うまくはなれない。

「受け流す能力が鍵になる」――。最近お会いした精神科の先生が言っていた。「岡崎さんはそれができているんじゃないですか」と。練習へ行けば、昨日までの現実を受け流せる。そして、新たな現実を受け入れられる。

(ウエスカ所属)

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