日本サッカー世界への挑戦

フォローする

ACL、新型肺炎で行方不透明 辞退・失格の恐れも
サッカージャーナリスト 大住良之

2020/2/6 3:00
保存
共有
印刷
その他

サッカーのアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)はプレーオフを終えて「グループステージ」出場の32チームが出そろい、2月10日にスタートの予定だった。しかし突然、第1回大会以来の危機が襲いかかってきた。主な原因は、中国の武漢を震源に急速に拡大する新型のコロナウイルスによる肺炎だ。

感染症と政情不安のダブルパンチ

第1回ACLは、重症急性呼吸器症候群(SARS)とイラク戦争(ともに2003年)の影響で決勝戦が半年間も延びた。そのため第2回大会を2003~04年シーズンとすることができず、ACLは04年から単年開催となって今年の第18回大会に至っている。しかしここで03年以上といっていい困難に直面しているのだ。第1回大会と酷似しているのは、「東で感染症、西で政情不安」というダブルパンチに見舞われたことだ。

1月29日、大会を主催するアジア・サッカー連盟(AFC)はグループステージ全6節のうち、2月と3月に予定されているイランと中国のクラブのホームゲームをすべてアウェーゲームと入れ替えることを発表した。中国の新型肺炎問題とともに、米国との対立が深刻な段階にあるイラン情勢を考慮してのものだった。

だが2月1日、オーストラリアが「中国からの外国人の入国制限」の方針を決め、第1節、2月11日予定の「パース・グローリー対上海申花」、12日予定の「シドニーFC対上海上港」の2試合が宙に浮いてしまった。

これを受けてAFCは4日に関係6カ国を集めて緊急会議を開き、この2試合を含め、中国チームが関与する第1節から第3節までの試合を、オーストラリアでのゲーム以外も、原則として4月~5月に延期することを決めた。ただし、第2節、2月18日の「チェンライ・ユナイテッド(タイ)対北京国安」は、北京国安が現在韓国国内で合宿をしていることから、予定どおりに開催される見通しだ。

ただ、新型肺炎は連日感染者や死者が増大し、予断を許さない状況のため、日程の最終確定は2月11日ということになっている。

神戸は広州恒大との試合が3月から5月に延期された=共同

神戸は広州恒大との試合が3月から5月に延期された=共同

なお、4日時点の決定で日本国内の試合で影響を受けるのはいずれも第3節の試合で、3月3日予定だった「ヴィッセル神戸対広州恒大」が5月26日に、3月4日予定だった「FC東京対上海申花」と「横浜M対上海上港」がともに5月27日となる。5月中旬と下旬に予定されていた「ラウンド16」の試合も、1カ月ずつ延期されることになった。

しかし新型肺炎もイラン情勢も先が見えているわけではない。現時点で、4月上旬から5月上旬に予定されている中国とイランのホームゲームが開催できるかどうか、誰にもわからない。イランのチームは「中立地開催」が可能だろうが、中国への渡航禁止や中国からの入国制限などの防疫対策が各国に広まれば、中国チームの試合開催が不可能となり、出場辞退もしくは失格になる恐れも十分ある。

さらに、日本やタイなど、感染者が日ごとに増加している国のチームの入国が拒否されるケースも考えられないわけではない。AFCは懸命に日程調整の努力をしているが、ACL2020がどうなるか、まったくわからない状況だ。

休み6日のみ、「オフ」とはいえず

今年のACLは、新型肺炎やイラン情勢だけでなく、どこか様子が違う。日本のファンにとっては、プレーオフで鹿島アントラーズが敗退し、09年にACLが「1カ国最多4クラブ」になって以来初めてのグループステージ出場3クラブとなってしまった。

昨年のJリーグで3位だった鹿島。天皇杯では決勝に進出しながら神戸に敗れ、1月28日のACLプレーオフを戦うはめになった。

ACLプレーオフでメルボルン・ビクトリーに敗れ、肩を落とす鹿島イレブン=共同

ACLプレーオフでメルボルン・ビクトリーに敗れ、肩を落とす鹿島イレブン=共同

1月1日に死力を尽くして19年シーズンの最終戦を戦ったチームの新シーズン初戦がわずか4週間後というのは、いかにも酷だった。鹿島は1月8日に始動。プレーオフまでのチームづくりや準備を考えれば、これがぎりぎりというところだったのだろう。だが休みはわずか6日間だった。これを「オフ」といっていいのか――。

日本サッカー協会が定めたいわゆる「プロ選手の統一契約書」には、「選手は、競技シーズン終了後に連続して2週間以上の休暇を受けることができる」とある。オフをきちんと取らないと、そのシーズンのパフォーマンスに影響するだけでなく、負傷・故障の原因にもなり、ひいては選手生命を縮めることになりかねない。この権利が厳格に守られるような日程にしなければならない。

ACLの日程を動かすようAFCに働きかけるか、さもなくば天皇杯決勝を早めるか、選手を守るためにも、Jリーグと日本サッカー協会が真剣に動くべきときにきている。

今年の鹿島は、準備期間が短かったことに加え、監督の交代や主力の大幅入れ替えなど、悪い条件が重なった。1月28日、メルボルン・ビクトリーとのプレーオフでは、先発11人のうち6人が新加入選手だった。それでも鹿島は圧倒的にボールを支配して試合を進めたが、相手ゴールを破ることができず、一瞬のスキをつかれて決勝点を許した。

横浜Mなど日本の3クラブには、まずは「グループ突破」を目指してほしい=共同

横浜Mなど日本の3クラブには、まずは「グループ突破」を目指してほしい=共同

日本のチームのACLプレーオフ出場は15年からのことで、19年と今年は2クラブが、それ以外は1クラブが関与してきた。17年に浦和レッズが、そして18年に鹿島が優勝を飾ったこともあり、21年には再びプレーオフ出場は1クラブだけとなるが、日程問題を考えなければならないことに変わりはない。

グループステージに突入するFC東京、神戸、横浜Mの3クラブは、まずは「グループ突破」(4チーム中2位以内)を目指して全力を尽くしてほしい。しかし大会の行方が不透明になってしまったいま、今季のACLを占うことは困難というほかない。

「スポーツ」のツイッターアカウントを開設しました。

日本サッカー世界への挑戦をMyニュースでまとめ読み
フォローする

電子版の記事が今なら2カ月無料

保存
共有
印刷
その他

サッカーのコラム

電子版トップスポーツトップ

日本サッカー世界への挑戦 一覧

フォローする
9日に無観客で行われたイタリア・セリエAの試合=APAP

 英国で行われていたバドミントンの全英オープンで日本選手が大活躍し、ダブルスで男女とも優勝を飾ったことを伝えるテレビのニュースは、どこか遠い世界の出来事のように思われた。スタンドを埋めた観客や、日本か …続き (3/19)

ヘディングはサッカーで最も心躍るシーンの一つ。2月21日の浦和戦で湘南・石原直が頭でゴール=共同共同

 ボールを頭でたたいてシュートしたり、パスしたり、またクリアする――。ヘディングはサッカーにしかない技術だ。クロスが上がってゴール前で両チームの選手が懸命にジャンプし、得点を争う競り合いは、サッカーで …続き (3/5)

川崎は即戦力新人の旗手(中央)ら、生きのいい若手がどんどん伸びている=共同共同

 28シーズン目のJリーグが21日に開幕する。
 J2に降格したジュビロ磐田と松本山雅に代わって柏レイソルと横浜FCが昇格、18クラブによる12月5日までの34節、全306試合の熱戦が始まる。
 今季はビ …続き (2/20)

ハイライト・スポーツ

[PR]