うまい白飯、試作無限 炊飯器の開発チーム
匠と巧

2020/2/10 2:01
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炊いた米を皿に盛り、香りや味を確かめる宇都宮さん(左)ら開発チーム=笹津敏暉撮影

炊いた米を皿に盛り、香りや味を確かめる宇都宮さん(左)ら開発チーム=笹津敏暉撮影

パンにピザ、ラーメン――。食が多様化しようと、時に白飯をかき込みたくなる人も多いのではないか。日本人に郷愁すら感じさせるおいしい白米。家電各社はかまどで炊いたかのような味や食感にこだわり、最近では1台約10万円の高級炊飯器もよく売れている。国内最大手、象印マホービンの宇都宮定さん(50)は同社内で炊飯器の研究開発を一手に引き受けている。

「うまい。これなら売れる」。入社以来27年間、炊飯器の開発に携わってきた宇都宮さん。製品化の最終的な決め手は自らの舌だ。別々の炊飯器で炊いたご飯を食べ比べ、微妙な味や香りの違いを確かめる。

開発チームが1年で使うコメの量は30トン。一般的な1人の年間消費量の約550倍にあたる。「自分で食べておいしいと思ったものは売れる」と言えるのも、それだけの量を食べてきたからだ。

「ご飯のおいしさは甘さと同義」(宇都宮さん)。のり状になるまで軟らかく煮れば、コメの70~80%を占めるでんぷんが分解されて口に含むと甘く感じる。もちろん話はそう単純ではなく、おかゆのようになっては意味がない。いかに甘さを引き出しつつ、弾力を保つか。究極のバランスを求め、様々な釜の材料や調理法のなかから「無限にある組み合わせ」を試す。

宇都宮さんの真骨頂は、炊飯器の微妙な火加減や蒸し時間を制御するプログラミング技術だ。

「次は煮る時間を1分長くしてみよう」「もう少し圧力を加え、粘り気を出そう」。オフィスでパソコンをのぞき込みながら白飯をほお張る。試作した炊飯器のプログラムを調整し、火加減や蒸らす時間を少しずつ変える。新商品を出すまでにはいくつもの組み合わせを試す。

同社の炊飯器は日本人だけではなく、訪日客にも人気だ。アジア各地でも販売するため、タイ米など外国産も試す。個人によってコメの硬さや粘り具合の好みは分かれ、はやりすたりもある。だからこそ象印の炊飯器は硬さや粘り気を調整できるようになっており、最新機種の組み合わせは100通りを超える。

宇都宮さんはプライベートでも多くの人がおいしいと感じる1杯を探求。「外食する際は必ず白米を食べ、どんな炊き具合が人気か確かめている」。いまはコンビニエンスストアなどで販売される味の濃いおかずにより合う、比較的硬いご飯が人気だという。

最近は競合各社の製品も改良が進み「もうこれ以上おいしいものはできない」と限界を感じることもある。それでも自分が開発した製品が完璧と思ったことはない。

「必ず改善点がある。それが開発者ってものじゃないですか」。炊飯器への飽くなきこだわりはなくならない。国内のコメ消費量は減少が続いている。それでもコメ文化がなくならないのは、おいしく食べさせる工夫を続ける宇都宮さんのような人がいるからなのかもしれない。

(渡辺夏奈)

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