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株式時価総額4兆ドル消失 新型肺炎でマネー逆回転

上海の金融街に表示される大型の株価ボード

リスク資産に向かっていた投資マネーが逆回転している。3日に取引を再開した上海市場では株価指数が一時、9%安と急落した。新型肺炎問題を懸念し、世界の株式時価総額はこの10日間ほどで約4兆ドル(430兆円)減った。中国経済は生産でも債務でも巨大になり、世界経済への打撃は大きくなりかねない。世界景気回復への期待が揺らいでいる。

1週間半ぶりに取引を再開した3日の上海総合指数は大幅に続落し、春節前の1月23日終値比8%安の2746.6056で取引を終えた。約1年ぶりの安値水準だ。

中国株は一部を除いて値幅制限が上下10%と小さい。値幅制限いっぱいまで下げた銘柄は3000超と上海、深圳上場企業の8割に達し、下げ圧力は続きかねない。

資金流出の速度は速い。国際金融協会(IIF)によると、1月21日からの1週間で約284億ドルが中国株から流出した。19年4月の米中貿易摩擦時を超えるペースで、今後も広がりかねない。3日は元の対ドル相場も急落し、1ドル=7.02元と2019年12月以来の安値をつけた。

日経平均株価が前日比233円安となるなど、3日はアジア各国の株価が下げた。QUICK・ファクトセットのデータをもとに推計すると、世界の時価総額は過去最高の88兆ドルに達した1月20日から2月3日までに4兆ドル減少した。3日は中国だけで5000億ドル程度目減りしたもようだ。

新型肺炎がどの程度、世界経済に打撃を与えるか計り知れず、市場では不安が先行している。

中国のマクロ経済運営の司令塔、国家発展改革委員会の連維良副主任は3日の記者会見で、新型肺炎が中国経済に与える影響について「経済、とくに消費への影響が大きくなっている」と述べた。交通・運輸、文化・旅行、ホテル・飲食、映画・娯楽などの業界への打撃が大きいという。

多くのエコノミストは2003年の重症急性呼吸器症候群(SARS)を参考に、今回の新型肺炎の経済への影響を分析している。

連氏は「中国経済の実力、物質的な基礎、突発事件への対応能力は当時より明らかに増した」と主張し、打撃はSARSを下回るとの見方を示した。SARSは03年春に影響が集中し、4~6月の国内総生産(GDP)の実質成長率が前年同期比9.1%と1~3月より2ポイント下がった。

一方、民間の調査機関にはSARSを超えるとの試算が多い。英調査会社オックスフォード・エコノミクスは生産活動停止などで中国景気が落ち込み、20年の世界のGDP成長率を0.2ポイント押し下げるとみる。

03年に比べ、中国の存在感は大きくなった。世界のGDP(購買平価ベース)に占める割合は8%から20%にまで上昇。貿易シェアや原油需要、旅行支出も急拡大した。

世界の債務に占める中国の割合も3%から20%に高まった。中国景気の減速や業績への打撃は、借金依存の中国企業の存続を揺るがしかねない。金融情報会社リフィニティブの19年12月時点のデータでは、中国企業(金融除く)が発行した社債の償還額は20年に4200億ドル(45兆円)、21年に6300億ドル弱、22年は5700億ドルに達する。3年間の合計額は1兆6千億ドルを超え、17~19年の1.5倍だ。

債務の返済が膨らむのは習近平(シー・ジンピン)指導部が景気対策を目的に進めてきたインフラ整備の副作用だ。中国企業は習指導部が発足した12年秋から企業の債務増加に拍車がかかった。

上場企業の総負債は19年9月末で40兆元(約620兆円)を超え、12年末(17兆元弱)の2.4倍に膨らんだ。19年12月に元利払いが滞った「フフホト経済技術開発区投資開発集団」など政府系企業だけでなく、大手民間企業にまで過剰債務の重荷はのしかかっている。

現状では「景気回復のトレンドが後ずれしても崩れるとは考えていない」(フィデリティ投信の福田理弘氏)と冷静な見方は多い。各国が感染防止策を打ち出し、政府対応が遅れたSARSの時よりも早期に事態は収束するとの見方もある。

ただ、SARS流行は世界景気が拡大に向かう入り口で起きた。今回は景気循環の後期にあり、世界の債務の水準も大きくなった。影響が長引けば思わぬ景気後退リスクを高めかねない。

(上海=張勇祥、北京=原田逸策、長谷川雄大)

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