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「一発で仕留める」貫く 視覚障害者柔道・瀬戸勇次郎(上)

阿部一二三と丸山城志郎のマッチレースが佳境を迎えた東京五輪柔道の代表争い。視覚障害者柔道でも東京パラリンピックの切符を巡り、同じ男子66キロ級での一騎打ちが熱を帯びている。主役の一人は1996年アトランタ大会以来、パラに5度出場、3連覇を含め金銀銅をそろえた44歳の藤本聡。その大ベテランをしのぎ、初出場を射程に捉えているのが1月27日に20歳になった新鋭、瀬戸勇次郎(福岡教育大)だ。

「一本を取れる柔道家」として期待を集める

2017年11月の全日本視覚障害者柔道大会を皮切りに6度戦い、藤本が2連勝した後、瀬戸が4連勝。既に立場が入れ替わったかに見える成績でも、瀬戸にその自覚も油断もない。直近相まみえた19年12月の全日本大会は「気迫、執念にやられそうになった」と薄氷を踏むものだった。

序盤から「入り方を変えてきた」という藤本のともえ投げに防戦一方。不惑を過ぎ、なお自らの柔道を向上させる意気にあふれた藤本に三角絞めに入られ、「まいった」の寸前に追い詰められた。だが、この攻防が勝負のあや。仕留め損ねた藤本に疲れが見え「これがかからなかったらできることは何もなかった」と苦し紛れに近い背負い投げが決まる。そのまま抑え込んで勝利をもぎ取った。

「新しい技をいくつか練習してきたけど、そんな余裕もなかった」。だが、窮地を救った背負い投げの切れこそ、この新星が「一本を取れる柔道家」として期待を集めるゆえん。その宝刀は、高3で視覚障害者柔道に転向するまで健常者にもまれて磨かれた。

福岡・修猷館高時代、柔道部顧問の藤原誠にたたき込まれた、深く技に入る意識がその原点だ。「左肩を胸につけるくらい回る。180度ではなく、270度ぐらいの意識で」。思い切りの良さに「肩の柔らかさを生かしている」とその藤原が評するしなやかさ。両面が合わさり築かれたのが「一発で仕留めにいく」と自任する柔道スタイル。転向後2年半で日本トップにのし上がったベースには筋の通ったものがある。

3位に入った19年9月のアジア・オセアニア選手権(カザフスタン)などを経て、藤本を追いかけていた五輪出場にかかわる大会での獲得ポイントはついに逆転した。2人のデッドヒートも残す大会は、あと1つ。ともに出場予定の4月の英国でのグランプリ大会で、わずかでも上位に進出した方が出場権を得る僅差の戦いだ。

東京パラを競技人生の集大成と明言するレジェンドの壁を、次世代のエース候補が打ち破るのか。最激戦区の答えがまもなく出る。=敬称略

(西堀卓司)

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