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室伏由佳さんが伝える競技経験 その「鉄学」とは
陸上投てき 室伏由佳(最終回)

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2020/2/5 5:30
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「オリンピックは心の中で終わらない。神聖なもの」と話す室伏由佳さん(2019年12月、都内のホテルで)

「オリンピックは心の中で終わらない。神聖なもの」と話す室伏由佳さん(2019年12月、都内のホテルで)

2004年アテネ五輪に出場した室伏由佳さん(42)は、その後も円盤投げとハンマー投げの投てき2種目で活躍した。合わせて日本選手権17回優勝という成績は、「アジアの鉄人」と呼ばれた父、重信(74)、五輪金メダリストの兄、広治(45)に勝るとも劣らない。だが競技生活は常にケガと病気を抱えながらのものだった。現在、由佳は順天堂大学の講師を務めるなど、現役時代のつらくも貴重な経験を伝えようと活動している。(前回は「一家で五輪出場の室伏由佳さん ケガ・病気が襲う」

◇   ◇   ◇

初のオリンピック出場をかなえた04年アテネ五輪後、室伏由佳のキャリアは円熟期を迎える。五輪イヤーにはハンマー投げで急成長を見せ04、05、08、09、10年と、日本選手権の円盤投げとハンマー投げ両種目で5回のダブル優勝を果たし、07年には円盤投げで自身の日本記録を8年ぶりに更新。10年のアジア大会(中国・広州)では、ハンマー投げで表彰台(銅メダル)に立った。男女を通じ、投てき2種目でトップレベルを長く維持するのは極めて難しいとされる。かつて、鉄人の娘、広治の妹と呼ばれた女性は、父とも、兄とも異種の偉業を成し遂げた。

一方で、原因不明の急性腰痛症を発症した05年から、常に腰の状態をうかがいながらトレーニングでの工夫を重ねなくてはならなかった。高校時代に椎間板ヘルニアの診断を受けたが、急性腰痛症の痛みは全く違う。歩行さえできなくなるほどだった。

また、09年に判明した子宮内膜症も悪化し、様々な対症療法を試みる。

コンディショニングを最優先にしたピル使用の知識、ホルモン療法の方法など、当時の日本の女性アスリートは欧米に比べて十分な情報を与えられていなかった。未知の分野を切り開くため自分で資料を読み、適切な情報を得ようと必死に学んだ。

■女性アスリート、指導者のために

婦人科の疾患をカミングアウトした

婦人科の疾患をカミングアウトした

「選手は我慢強く、どうしても競技を最優先してしまう傾向があります。婦人科の疾患は特に、相談するドクター、副作用を考えたうえでの服薬、さらにトップレベルを維持しながらどう病気と付き合うかなど、とても難しい問題です。私の経験をこれからの女性アスリート、同時に指導者のためにも少しでも生かせるよう、経験をシェアしたい、と考えたんです」

病気、ケガと付き合い、克服しながら競技を続け、10年には、経験を伝えるため踏み出した。

当時所属していたミズノ、女性スポーツを支援するNPO法人「JWS(ジュース)」、産婦人科医の江夏亜希子らの支援で初めて開かれたシンポジウムには、男女数十人が集まり、この場で指導者を前に、婦人科の問題とどう向き合うか、適切な治療、服薬などデータをもとに解説した。なかなか表に出ない、しかし重要な話をカミングアウトし共有しようとする勇気は、円盤投げ、ハンマー投げの記録に加え、由佳にもう一つのキャリアを与えた。

アジア大会での銅メダルを獲得した翌年、原因不明の腰痛は、2種目での投てきを繰り返した負担による「脊柱管狭窄(きょうさく)症」とようやく判明する。原因が分かり、引退への地図も描ける。競技者としての集大成に、12年のロンドン五輪選考会にチャレンジ。代表にはなれなかったが、五輪に区切りを付け、6月、痛みの原因となっていた腰の神経をはく離する大きな手術に踏み切った。しかしここでもまた、自らの体を「実験台」とするかのように、リハビリを行い、3カ月後の9月、全日本実業団選手権で復帰、同時に現役最後の試合に臨んだ。

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