米平均寿命、4年ぶりプラスに 薬物中毒死が初の減少

【ニューヨーク=西邨紘子】先進国では異例の短縮が続いていた米国人の平均寿命が4年ぶりにプラスに転じた。米疾病対策センター(CDC)が30日発表した最新データによると、2018年の米国人の平均寿命は78.7歳と、前年比で0.1歳延びた。喫煙者の減少などでがんによる死亡が減ったほか、近年急増していた薬物の過剰摂取による中毒死が減少に転じたことも寄与したもようだ。
男性の平均寿命は76.2歳、女性は81.2歳で、それぞれ17年から0.1歳延びた。死因のトップは「心疾患」、2位は「がん」、3位は薬物の過剰摂取など「不慮の事故」で、順位は前年と変わらなかった。死因のトップ10のなかで「インフルエンザ・肺炎」(8位)と「自殺」(10位)のみ前年比で増加した。
CDCが同日、発表した薬物中毒死に関する統計によると、18年の薬物過剰摂取による死亡者数は6万7367人で、17年比4.1%減だった。減少は1999年の調査開始以来初めて。依然として高い水準にあるものの、オピオイド中毒問題への対策が進み、死亡数はピークを越えた可能性がある。
ただ、米国で平均寿命が今後も延び続けるかは不透明だ。2019年に米国人の肥満率は約4割に達した。糖尿病など生活習慣病のまん延に加え、医療へのアクセスが深刻な問題となっている。
米国人の平均寿命は14年の78.9歳をピークに短縮してきた。その一因と指摘されるのが、働き盛りの20~40代を中心とした薬物中毒や自殺による死亡件数の増加だ。低学歴の白人男性で死亡率の上昇が著しく、経済的困窮や将来への悲観を遠因とした「絶望死」とも呼ばれる。18年には自殺数はなお増加傾向にあり、ピークを越えたかに見える薬物死も依然として高い水準であることは変わりない。