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「イカがいねぇ」不漁底なし 20年漁獲枠も過去最低に

2020/1/30 17:48
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イカの不漁がとまらない。塩辛などの加工原料となる冷凍スルメイカは2019年の漁獲量が前年より8割減、価格は5割高い。先の見えない不漁で大型船数は10年間で半減。国際的な資源管理の枠組みもなく、日本海の漁場では中国船などの違法操業が常態化している。持続可能な漁業を目指す水産庁は30日、スルメイカの20年漁期(20年4月~21年3月)の漁獲枠を過去最低の5万7千トンにする方針を示した。

イカが少なく、寂しい競り(函館市水産物地方卸売市場、11月中旬)

イカが少なく、寂しい競り(函館市水産物地方卸売市場、11月中旬)

「イカがいねぇ」。イカの町として有名な北海道函館市の卸売市場ではあちこちでため息が漏れる。夜景を彩るイカ釣り船の「いさり火」もほとんど見えない。

不漁は全国的だ。19年の総水揚げ量は刺し身やイカソーメンなどに向く「生鮮イカ」が過去最低だった前年並み。珍味などに使う「冷凍イカ」は前年比8割減り、平均卸値も1キロ898円と前年より5割上昇した。

水産庁は30日、漁師や加工業者などを招き会議を開いた。この場で示された20年漁期の漁獲枠案は5万7千トン。過去最低水準だった19年漁期からさらに15%減らした。

この漁獲枠案を見た参加者の反応は意外だった。「枠が大きすぎる。もっと規制すべきだ」(青森県の漁師)。実は19年度は6万7千トンの枠があるが、19年4~12月の漁獲量は2万1千トン。枠の3分の1に満たない。「資源保護で1年でも早くイカが復活しないと、もう生活できない。真剣に考えてくれ」(同)。

不漁の原因は、水温など海の環境がイカのふ化や生育に適さなかったためとされる。自然にはかなわない。だが「人の力でできることは、なんとかして取り組まなければならない」と全国いか釣り漁業協会(東京・港)の重義行会長は訴える。

まずは「日本の領海で安全に操業できるようにしてほしい」(山形県の漁師)のが現場の願いだ。好漁場である日本海大和堆水域には、イカを狙って北朝鮮や中国の漁船が押し寄せる。

水産庁取締船は19年にのべ約5千隻に退去警告、約1500隻に放水措置をとったが、違法操業が常態化している。

国際的な資源管理も課題だ。マグロやサンマは、国際会議で漁獲ルールを定めているが、イカはほぼない。大和堆は「日本、ロシア、北朝鮮が主張する排他的経済水域(EEZ)が食い違っており、協調した資源管理ができる枠組みがない」(水産庁)。

「このままでは漁業経営が成り立たない」(重会長)。いか釣り協会には遠洋で群れを追う中大型船が所属するが、船数は約60隻と10年間で半減した。先の見えない不漁に「今年も少なくとも5隻以上が操業を断念する」(重会長)。

「青森県の大間のマグロは津軽海峡のイカを食べることで脂が乗り、うまくなるんだよ」(マグロの競り人)。イカは人間だけでなく、ブリやマグロなど様々な魚のエサとして海の食物連鎖に不可欠な存在だ。不安定な資源や漁師の減少、国際的な争奪戦などイカを巡る問題は、日本の水産業の縮図でもある。

水産庁は3月ごろ、水産政策審議会の分科会で漁獲枠を正式に決める。

(佐々木たくみ)

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