#日経イチグラ 北海道からのクイズに挑戦 Vol.2
「作問」の魅力

今回は北海道地区の第2弾。
「札幌創成高校」「道東クイズサークル」「Q宅ジュニア」です。
札幌創成高校
道東クイズサークル
Q宅ジュニア
各クイズへのコメントはこちら
札幌創成高校へのコメント
<U22編集チーム>
東芝は1985年に世界初のラップトップPC(パソコン)として「T1100」を商品化しました。89年に発売した「dynabook(ダイナブック)」はノートPCの代名詞的なブランドとなりました。しかし、今のDynabook株式会社はシャープ傘下。パソコンの栄枯盛衰を物語るかのような存在であり、作問にする価値の大きい題材だと思います。
ただ、今回の問いで柱になっているのは、東芝の製品ではありません。「パーソナルコンピューター」という概念を提唱したとされる先駆的科学者のアラン・ケイが1960年代に構想した、理想的な個人向けコンピューター「ダイナブック」のほうです。実際に試作されたマシンは「Alto(アルト)」と呼ばれています。スティーブ・ジョブズが見たのは、このアルトだそうです。このあたりは名前の扱いがややこしいですよね。ほどよくぼかしてしまうのも一案でしょう。
もし作問者が「ダイナブックのスペックを満たすコンピュータは開発されていない」というエピソードに面白みを感じたのであれば、そこに力点を置いて組み立てるほうが意図は伝わりやすいかもしれません。ケイやジョブズにまつわる逸話を知らない人でも、後段で気づけるよう、東芝絡みのエピソードを添えておく方法もあります。
ご参考までに例えばですが、「スティーブ・ジョブズが『マッキントッシュ』を開発するきっかけになったともいわれる、『パソコンの父』アラン・ケイが提唱した、理想のパソコンで、後に東芝が発売した世界初のノートPCのブランドにも使われたのは何でしょう?」という組み立て方もあります。
道東クイズサークルへのコメント
<QuizKnock>
モヤシとキクラゲという少し地味な野菜たちを主役にし、これらが使われるお店は何だろうと考えられる発想問題でもあります。「多くの人が考えないことに光を当てる」「知識を使って考えて遊ぶ」というクイズの2つの良さが同時に成立している良問です。
早押しより、全文を出してじっくり考える形式に適した問題ですね。最後に「ちゃんぽん」という大ヒントを入れる選択肢もありますが、入れなくて正解だと思います。入れるなら早押しにして徐々にヒントが出る構成にしたいですが、「モヤシとキクラゲ」から予想するには早押しでは時間が足りないので。ヒントの性質に合った問題構成ですね。(山上)
<U22編集チーム>
食の安全・安心は世の中の関心が非常に高いです。このテーマを柱に据えた設問はとてもタイムリーだと思います。今回の設問で主なきっかけになっているのは佐賀第3工場の稼働の件でしょうか。設問文では「国産モヤシとキクラゲの加工専用工場」とありますが、リンガーハットのプレスリリースによれば、「もやし栽培と、きくらげの加工の専用工場」とありましたので念のため。
同じプレスリリースによると、モヤシは1977年から自社で栽培してきたそうです。キクラゲも2015年8月から国産を使い始めています。佐賀第3工場の稼働以前から、同社は国産食材の調達に努めてきたようです。継続的な取り組みの場合、どのタイミングで作問するかの判断が難しいですよね。大きな節目と呼べるタイミングであれば、設問の情報価値が高まりますし、逆に、細かい動きであれば、あえて見送る判断もあります。ちなみに、リンガーハットの出店マップを見る限り、2020年3月末時点で福井県だけは未出店の表示になっています。こういう出店情報もしばしば作問素材に選ばれます。
新聞記事やプレスリリースを素材に用いる場合、ニュースを割とストレートに扱うこともできますが、文中で補足情報のような形で紹介されている事柄にフォーカスすると、独自性の高い問題になることがあります。今回のプレスリリースには、キクラゲの国内自給率がわずか3%にとどまり、国産食材の安定確保が非常に困難だったという記述がありました。こういう情報は「おいしい」です。例えばこのあたりを生かして、「国内自給率が低い農作物のうち、ちゃんぽんに欠かせない食材の一つで、リンガーハットが国産を売り物にしている、漢字で『木の耳』と書くキノコは何でしょう?」とキクラゲを問う仕立て方もあります。
Q宅ジュニアへのコメント
<U22編集チーム>
聞き慣れた言葉を、あえて正解ワードに据えるのは、作問の醍醐味の一つですよね。言うまでもなく「富士山」の知名度は抜群です。「日本一高い山」の手前に、どんな要素をちりばめるか。作問者にとって工夫のしがいがあるところではないでしょうか。今回は罰ゲームという切り口を用意して、富士山が持つ一般的なイメージからのずらしを成功させています。
序盤でビジュアル要素を組み込むと、解答者がイメージをつかみやすくなるのですが、「手の甲を高くつねり上げる」という身体的表現があることで、わかりやすさがアップしています。ただ、実は子どもの遊びには地域差が大きかったりもするので、意外に注意が必要です。この罰ゲームがどれくらい知られているのか見極めが難しい部分もあるので、「標高3776m」の手前に、もうひとつのヒントフレーズがあってもいいかもしれないです。
例えばですが、「しっぺ」「デコピン」でキーワード検索を試すと、万単位でヒットしました。しかし、「富士山」を加えると、とたんに少なくなります。罰ゲームという言葉も意味が広いので、「しっぺやデコピンのような罰ゲーム」と、説明を添えると、より解答者に親切になるかもしれません。ただ、丁寧に説明しすぎないことで生まれる直球感は気持ちのよいものなので、バランスをどのようにとっていくかが腕の見せ所です。
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