春季労使交渉 労使に方針を聞く - 日本経済新聞
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春季労使交渉 労使に方針を聞く

2020年の春季労使交渉は、経済のデジタル化など急速な構造変化のなかでの議論となる。時代に合った雇用や賃金体系を労使で築けるのか。賃金交渉の前提となる収益環境は、海外経済の停滞など先行きの不透明感が強い。経営側と労働側の代表に方針を聞いた。

日本型雇用制度、見直しを

経団連経営労働政策特別委員長 大橋徹二氏

――経団連が提起した日本型雇用制度の見直しに、連合などから懸念の声も出ています。

「日本型雇用制度には若手の雇用率や会社への忠誠度を高める利点はある。ただ経済のグローバル化やデジタル化で業界そのものが変化している時代に、(年功序列賃金など)従来の日本型雇用だけでは対応できない。その意味で、職務を明確にする『ジョブ型雇用』の拡充を提案した」

「社員の専門技能が役割を終えたら、その職もなくなる欧米のようなジョブ型制度を指しているわけではない。社員への再教育などで雇用を守ることは大事だ。日本型雇用にジョブ型も組み合わせて、各社が労使で最適な方法を考えてほしい」

――ジョブ型雇用を広げるうえで必要な環境整備は何ですか。

「日本では(転職を前提とした)ジョブ型雇用の労働市場が育っていない。このため大学を卒業したばかりの優秀な若手が海外に流出しているといった問題もある。ジョブ型で働き続けたい人のために、労働市場や評価基準を作っていかなければならない」

「雇用制度の見直しは、1カ月ほどの春季交渉だけで結論を出せるものではない。我々の問題提起をトリガー(引き金)とし、労使が通年でこのようなテーマを議論してほしい」

――昨年まで続いた2%超の賃上げ率を、どう維持していきますか。

「企業業績は同じ業種でもばらつきがある。輸出産業や製造業は前年より厳しくなっている。賃上げ率が2%を超すかどうかは見通せないが、経営側は賃上げの勢いを保つことを念頭に置いて交渉に臨んでもらいたい」

企業内最低賃金で底上げ

 連合会長 神津里季生氏

――基本給を一律に底上げするベースアップ(ベア)で2%程度の要求に加え、労使が決める企業内最低賃金の目標額を初めて盛り込みました。

「ベアの上げ幅だけでなく企業内最低賃金で時給1100円以上という目標を掲げ、中小企業の賃金底上げや非正規労働者との格差是正を強く求める。経団連の指針は大企業の問題意識が大半で、日本全体の問題への危機感が感じられない。デフレ下の20年間で大企業と中小の格差は拡大した。全体で賃上げを進めないと、デフレ傾向から脱することはできない」

――経団連は成果に応じたベア原資の配分など「脱一律」の労使交渉を求めています。

「日本の賃金水準は世界的に後れをとっている。米国は過去20年間で賃金水準(名目ベース)が2倍、欧州連合(EU)の先進国は約1.6倍になった。だが日本は0.9倍と1割下がった。賃金水準が上がらないまま人口減少が続くと日本全体がしぼんでいく」

「一律で2%相当といっても賃金制度は企業ごとに異なる。回答額の配分は各労使で納得できる内容に落とし込む話だ」

――年功序列賃金などの改革も焦点です。

「大企業では正社員の採用や育成について労使間で多くの改善を積み重ねてきた。だが日本の9割以上は中小で、4割が非正規労働者。日本型雇用制度自体が機能していない場合も多い。職務を明確にする『ジョブ型雇用』の拡充は人材育成など日本型雇用のよい部分を失いかねない。一方で外部の高度人材を活用することには賛成だ。全社員をジョブ型に切り替えるのではなく、メリハリが重要だ」

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