行き届かぬ介護さらに 特養待機29万人、「サ高住」の8割は終末期対応できず

2020/1/29 23:00
保存
共有
印刷
その他

介護政策の機能不全が一段と鮮明になってきた。特別養護老人ホーム(特養)に入居できない要介護度の高い高齢者が30万人近くで高止まりし、比較的元気なシニア層が対象の「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」への流入が続いている。一方、国土交通省が29日示した調査結果では自立型のサ高住のうち8割近くの事業者は終末期のケアに対応できない。制度間の連携が働かず、介護ニーズと受け皿のミスマッチが広がっている。

国交省が29日に開いた有識者会議で示した調査によると、自立した高齢者向けサ高住ではほとんどが終末期のサービス提供を想定していない半面、入居者の7割近くは「人生の最期まで住みたい」と答えている。

サ高住は安否確認のサービスや生活相談を提供する民営の賃貸住宅。2011年、高齢者住まい法改正により登場した。補助金や税制優遇の後押しを受けて19年末の時点で約25万戸まで増えた。もともとは介護の手間が比較的かからない高齢者の入居を見込み、必要に応じて介護サービスを受けながら自立した生活を送りたいニーズに応えることを想定していた。

しかし当初の想定とのズレが広がっている。背景にあるのが要介護者数の増加と受け皿の不足だ。18年3月末時点で要介護認定者は641万人と、サ高住開始時から110万人増えた。ほぼ同時期の特養の利用者は10万人程度増えただけ。人手不足や地価上昇などが足かせとなり、要介護者の増加ペースに受け皿の整備が追いついていない。

19年4月時点で特養の入居待機者は約29万人にのぼる。行き場のない高齢者の一部は有料老人ホームほど費用がかからないサ高住に流入している。例えばサ高住で要介護認定されていない人の割合は約8%。この比率はここ数年ほとんど変わらず、制度開始の当初から要介護者の受け皿となっていた可能性がある。本来は特養を中心に受け入れるはずの要介護3以上の人も、サ高住の入居者の3割に達している。

行政の縦割りの弊害を指摘する声もある。サ高住は国交省と厚生労働省の所管だが、サ高住を住宅として捉えて普及を進めてきた国交省と、介護保険制度の枠内にある特養など施設型の介護を重視してきた厚労省との連携は十分とはいえない。

終末期の対応をみるとちぐはぐさが目立つ。国は費用がかさみがちな入院医療から在宅サービスへの移行を進めることを基本としている。「住宅」であるサ高住も受け皿のはずだが、今回の調査で明らかなように、介護、医療サービスの提供体制は十分ではない。

欧州では住宅への移行が進んでいる。スウェーデンでは高齢者は基本的にバリアフリーを確保した住宅に住み、自己負担に上限を設けた上で訪問介護や生活支援を受ける。高負担に支えられた仕組みだが、日本の施設型の介護とは趣が異なる。

高齢者数は40年にかけて増え続け、15年の約3390万人から500万人以上増える見通しだ。サ高住の増加はここにきて鈍り、増え続ける有料老人ホームは入居費用が比較的高い。特養も大幅増は望めない。社会保障制度を支える財源問題だけでなく、長い高齢期に生じるニーズをどう満たすのかというサービス改革の視点も欠かせない。

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]