景気回復途切れず、新型肺炎の影響注視 景気討論会

2020/1/27 19:05
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討論する(左から)安永、中川、神山、岩田の各氏(27日、東京・大手町)

討論する(左から)安永、中川、神山、岩田の各氏(27日、東京・大手町)

日本経済新聞社と日本経済研究センターは27日、都内で新春景気討論会を開いた。中国で発生した新型肺炎などの不確実性は残るものの、世界経済の緩やかな回復基調は途切れず続くという認識で一致した。日本も堅調な雇用・所得環境を背景に、東京五輪・パラリンピック後に景気が腰折れする可能性は小さいとの見方が大勢だった。

出席者は安永竜夫・三井物産社長、中川順子・野村アセットマネジメント社長、神山一成・日本銀行調査統計局長、岩田一政・日本経済研究センター理事長。司会は井口哲也・日本経済新聞社東京本社編集局長。

――世界景気はどうなるか。

三井物産の安永竜夫社長

三井物産の安永竜夫社長

安永氏 米中協議は第1弾の合意に達したが、トランプ大統領が秋に再選すれば貿易摩擦の状態が継続する状況は続く。中国経済の減速感は否めない。若干回復の兆しが出てきているところに新型肺炎が出てきた。中東情勢は偶発的に何が起きるかわからないリスクは考えておくべきだが、どの国もこれ以上、紛争がエスカレートすることは望んでいないのも事実だ。

中川氏 規模でけん引するのは米国か中国になるが、成長率でみると規模は小さくてもアジアの国は欠かせない。インドネシア、タイ、マレーシアなどは直接投資の誘致などに国として取り組んでいる。注目する価値がある。

神山氏 世界経済は緩やかに成長率を高めていく。足を引っ張る米中摩擦や地政学リスクは後退し、グローバルのIT(情報技術)サイクルも好転している。内需、個人消費がしっかりしていることも世界的に共通して観察される。テンポに不確実性はあるが、持ち直していく。

日本経済研究センターの岩田一政理事長

日本経済研究センターの岩田一政理事長

岩田氏 先進国が金融緩和で手を打ち、日本も12月に経済対策で早めに手当てしたのが効くとみている。米中の休戦もマインドをよくしている。ただ中国が米国からの輸入を2千億ドル増やすと割を食う国も出てくる。農産品はブラジルやオーストラリア、工業品は台湾や韓国、日本だ。

――新型肺炎の影響は。

中川氏 SARS(2003年に発生した重症急性呼吸器症候群)の時も中国経済は落ち込んだが回復は早かった。今回も短期的には目を離すことはできないが、過度に心配を膨らませるほどではない。

岩田氏 感染の度合いによるが、成長率に短期的には影響がある。今の段階では(感染者などの規模は)SARSより小さい。SARSは中国や香港の成長率には影響したが、世界全体には大きな影響はなかった。

――国内はどうか。五輪後に落ち込む懸念は。

日本銀行の神山一成・調査統計局長

日本銀行の神山一成・調査統計局長

神山氏 建設需要はあまり心配ない。いろいろな再開発案件があり、五輪後の落ち込みを補う。五輪に向けて増加するインバウンド(訪日外国人客)の流れを維持する努力をしないといけない。

岩田氏 製造業だけなら景気後退と言っていい。輸出が伸びず、外需で成長するのは難しい。設備投資も製造業が厳しい。生産の落ち込みは前回の増税後より大きい。非製造業は堅調さを保ち、全体として景気後退とはなっていない。

安永氏 五輪後にいきなり腰折れするということはないと感じている。昨年のラグビーワールドカップ(W杯)、今年の五輪、来年に大阪で開くシニアのスポーツイベント『ワールドマスターズゲーム』、さらに大阪万博も続く。日本を世界に示す機会がこれだけ続く期間はなかなかない。少子高齢化などの課題先進国として、一番早く課題を克服できる機会もある。

野村アセットマネジメントの中川順子社長

野村アセットマネジメントの中川順子社長

中川氏 製造業の輸出が厳しい半面で(景況感を示す)購買担当者指数は反転する兆しがある。生産の大幅なリバウンド(回復)はないにせよ、製造業からサービス業に波及する恐れはないとみる。企業の業績は底堅い。個社の差はあるが、悲観的には見ていない。

――堅調な雇用環境は続くか。

安永氏 デジタル化を進めれば1人当たりの生産効率は上がり、今までの仕事がなくなることを意味する。配置転換で新しい革新的なものが作れるかを考えると、社会全体でもう少し流動性を高めることも必要だ。海外から優秀な人材を集めることもラグビー同様、重要だ。

神山氏 生産拠点を海外に移して、国内は技術開発をしていく場とすると、アイデアをどんどん考えないといけない。遅くまで残業することは重要でなく、むしろ阻害になるかもしれない。働き方改革が重要だ。アイデアを企業収益に結びつけていけば、賃金が減ることも回避できるのではないか。

成長戦略、次の一手は?


 成長に向けた次の一手では、データで社会や日常生活を変えるデジタルトランスフォーメーション(DX)への対応や将来不安を取り除く改革が必要との意見が出た。
 安永氏は「海外からは富の分断がなく一体感があるとみられている」とし、「DXで効率化も世界でいち早く進むだろう」と指摘した。新社屋での働き方にも触れ「基本的な席数を社員数の7割にし、3割は出張や在宅勤務など社外で仕事する」とした。情報ツールの発達で「リモートワークは効率性を損なわず実現できる」という。
 中川氏は「消費が伸びないのは、年金への不安もあるのでは」と指摘。政府に持続可能な社会保障制度の改革を求めた。神山氏は中央銀行同士でデジタル通貨を研究する組織を作ったことについて「現時点で日銀に発行の計画はないが、決済環境の変化のスピードはかなり速い」と対応を急ぐ考えを示した。
 岩田氏は森林火災や台風被害など気候変動のリスクが景気に悪影響を与えるリスクが高まっていると指摘した。

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