イラクの米大使館にロケット弾 米イラン緊張再燃も

イラン緊迫
2020/1/27 18:30
保存
共有
印刷
その他

8日にイランの報復攻撃を受けた米軍が駐留するイラク中西部のアサド空軍基地(13日、アンバル州)

8日にイランの報復攻撃を受けた米軍が駐留するイラク中西部のアサド空軍基地(13日、アンバル州)

【ドバイ=小川知世、ワシントン=中村亮】イラクの首都バグダッドにある米大使館の敷地内に26日、ロケット弾が着弾した。米国とイランの対立が先鋭化する発端となったイラクにある米軍駐留拠点への攻撃から1カ月。全面衝突を避けたい米イランは一旦矛を収めたものの、対立の構図は変わらないままだ。新たな攻撃により、緊張が再燃するリスクが改めて浮き彫りになった。

イラク治安当局は26日、バグダッド中心部の旧米軍管理区域(グリーンゾーン)に同日夜、ロケット弾5発が撃ち込まれたと発表した。ロイター通信は関係者の話として、1発が米大使館敷地にある食堂を直撃し、3人が負傷したと伝えた。

イラクでは親イラン武装勢力による米国を狙った攻撃が続いていた。米軍によるイラン革命防衛隊のソレイマニ司令官殺害の報復として、米大使館が標的にされたとみられる。米国務省は声明で「イランや親イラン武装勢力によるイラクでの米側への攻撃は19年9月以降、14件に達した」と主張し、イラクに取り締まりの徹底を要請した。

イラクにある米拠点への攻撃は米イランによる報復攻撃の連鎖を招き、1月上旬に一気に情勢を緊迫させたばかりだ。

19年12月27日にはイラクの米軍駐留拠点が攻撃を受け、米国人1人が死亡した。米軍は29日、報復として親イランのイスラム教シーア派武装組織の拠点を空爆。これに反発した民兵らがイラクの米大使館を襲撃した。1月3日には米軍がソレイマニ司令官を殺害し、イランが8日にイラクの米軍基地を攻撃する国家レベルの報復に発展した。

一触即発の状態を招いた裏には米イラン双方の誤算が透ける。米国の圧力にイランは敵対姿勢を強め、自国民に死者が出た米国も司令官殺害を断行した。ともに8日を最後に収束に動いたが、同日にはイランが旅客機を誤射し、乗客乗員176人が犠牲になった。当初は死傷者ゼロとされた同日のイラクの米軍基地への攻撃でも米兵34人が脳振盪(しんとう)などと診断される被害が出ている。

「米国とは対話しない」「言葉に気をつけるべきだ」。イランの最高指導者ハメネイ師とトランプ米大統領は互いにあおり合いを続けている。重要政策をツイッターで打ち上げるトランプ氏も、複雑な権力構造を持つイランも一方的な情報発信が誤解を招きやすい。有効な対話チャネルを欠いたまま挑発を重ねれば、再び予期せぬ惨事を招きかねない。

互いに譲歩が難しい内政事情もある。11月の大統領選で再選を目指すトランプ氏は司令官殺害を成果として強調する。ペルシャ語でツイートも始め、イラン国内の反政府デモをあおって同国指導部に変革を促す構えだ。対するイランは2月に革命記念日と国会議員選挙、21年に大統領選を控える。保守強硬派が支持を得るため、挑発を一段と強める恐れもある。

当面は欧州を挟んで対話を探ることになりそうだ。英独仏はイランの核開発を抑える多国間合意を巡り、国連による対イラン制裁の再開につながる手続きを発動した。欧州連合(EU)は核合意の当事国会合を2月に開く予定だ。米国が欧州車への関税上乗せをちらつかせて、英独仏に発動を促したとの報道もあり、イランは核拡散防止条約(NPT)脱退を示唆して猛反発している。

核合意はすでに崩壊の瀬戸際にある。当事国による議論の紛糾は必至で、数カ月にわたって協議期間が延長されるとの見方がある。欧州や中ロを含む交渉の場が、制御不能な事態の歯止めになるかはなお見通せない。

電子版の記事が今なら2カ月無料

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]