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恩師の教え守って前へ 徳勝龍、20年ぶりの快挙

角界の乱世ここに極まれり、という結末だった。両横綱が早々と姿を消し、豪栄道や高安ら大関経験者が軒並み負け越す大荒れの場所を締めたのは伏兵中の伏兵。番付表をひっくり返すような徳勝龍の幕尻優勝は、上位と下位の力の差が縮まっている現状を象徴する出来事だろう。

貴景勝を破って初優勝を決め、感極まった表情の徳勝龍(26日、両国国技館)=共同

「自分なんかが優勝していいんでしょうか」。照れ笑いを浮かべたインタビューの第一声は偽らざる本心に違いない。三役も三賞も未経験、ほぼこの2年間は十両を主戦場にしてきた33歳。幕内下位を相手に星を伸ばしたことに負い目もあったのだろうが、出場力士の中で最高位の大関貴景勝を撃破した姿に観衆も納得の大歓声を送った。

「やっぱり貴景勝は突き落としが怖くて、思い切りいけなかったね」。八角理事長(元横綱北勝海)が指摘する通り、前日まで5日連続で繰り出していた土俵際の逆転技が大関の頭にちらついたのだろう。立ち合いの圧力を封じた時点で流れは徳勝龍に傾いた。

ほぼ互角の当たりから左を差し、右上手を引いて自分の形をつくれたから相手の強引な投げもこらえられる。「ちょっと振られたときに危ないと思ったんですけど、行くしかないと思った」。つかんだまわしを固く握り全身全霊で寄り切った。

その瞬間、土俵上で顔をくしゃくしゃにして泣いた。「うれしいのもあるし、15日間苦しかったのかも」。場所中には恩師の伊東勝人・近大監督を亡くした。「はたいてもいい。その代わり前に出てからだ」という生前の教えを忠実に守った末の戴冠。「一緒に土俵で戦ってくれてたんやな、そんな気がします」

千秋楽の結びを幕尻力士が務めるのは昭和以降で初めてで、再入幕力士が賜杯をつかむのも初めて。成り上がらんとする若手にも、どっこい踏ん張るベテランたちにも、これ以上ない刺激を与えたはずだ。(田原悠太郎)

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