取調室にTV通訳導入へ 検察、外国人の聴取増え

外国人の事情聴取に欠かせない「通訳人」の不足を補うため、法務省が地検の取調室と外部の通訳人とをつなぐテレビ会議システムの導入を急いでいる。全国約240カ所に拠点を整備し、遠隔地の通訳人にも依頼できるようにする。システムは2020年春の運用開始を目指す。
捜査機関が外国人から事情を聴く場面は増加しており、法律用語を含むやり取りを適切に通訳できる人材の確保が課題となっている。
通訳人は語学力、公平性が高いと認められた人を各地検が登録する。外国人被疑者や参考人の取り調べに同席して通訳にあたり、メールなど事件に関係する資料を翻訳する役割も担う。
全国の地検に登録された通訳人の数は非公表だが、人員は不足しているという。東京地検が18年度に通訳を依頼したのは約1万4千件で、14年のほぼ2倍になった。
在留外国人は18年末で273万人と7年連続で増加。法務省幹部は「外国人による犯罪件数は近年ほぼ横ばいで推移しているが、事件の被害者や目撃者として事情を聴くケースが増えているとみられる」と分析する。
通訳が必要になった場合、各地検が管内の通訳人に電話で依頼する。ただ、スケジュールが合わないことも多く、捜査関係者は「依頼の電話を半日かけ続けても通訳人が見つからないこともある」と漏らす。
言語による通訳人の偏在も目立つ。東京地検の場合「比較的、充足しているのは北京語と韓国語だけ」(幹部)で、英語も不足気味という。
こうした状況を改善するため、法務省は全国の地検と支部計237カ所の取調室にテレビ会議システムを導入する。同時に現状では地検ごとに管理している通訳人のリストを全国版に統合し、どこにいる通訳人にも管轄に関係なく依頼できるように改める。
通訳人は居住地に近い検察庁舎に設けられた「通訳室」から、離れた場所の取調室にいる外国人と検察官のやり取りに加わる。
法律用語のやり取りは専門性を伴う。分かりやすく通訳してもらうため、研修制度も充実させる。18年度までは東京都で年1回の開催に限られていた研修を順次、拡大する方針。19年度は東京を含め4カ所で開いた。
研修ではベテラン通訳人による講習のほか、検察官との意見交換を通じて、実務上の課題を探る。法務省幹部は「さらなる外国人の増加が予想され、スムーズに意思疎通できる事情聴取の環境を整えたい」と話す。