/

応挙の技 雪で冴える(展覧会評)

上方界隈、絵師済々I

円山応挙「雪松図」(1788年、個人蔵)

江戸時代の上方と江戸の絵画状況は、全くの別物だと考えた方がよい。明和2年(1765年)、江戸で多色刷り版画の錦絵が人気となる。それ以降、江戸の多くの浮世絵師たちが魅力的な作品を描いた。浮世絵は江戸の文化なのである。

では、江戸で浮世絵が描かれていた時、上方の絵画状況はどうだったのか。京都に関していえば、先ず挙げねばならないのは円山応挙の活躍である。

その応挙の代表作に「雪松図屏風」(三井記念美術館)がある。国宝に指定されている屏風絵だが、その一部を抜き取って掛け軸にしたような作品が「雪松図」である。「雪松図屏風」と同じく、松の幹と枝に積もった雪がフワッと表現されている。驚くべきことに、この白い雪の部分は、墨を塗り残した白い下地である。

画面左下には「天明戊申暮春冩」とあるから、天明8年(1788年)3月の作だと分かる。実は、この年の1月晦日(みそか)に京都史上最悪と言われる天明の大火が起きている。およそ2日間続いた火災により御所ほか多くの建物が焼失。四条通りにあった応挙の自宅も焼失した。大変な時期に描かれた作品なのだが、応挙の技は冴(さ)えている。

この技は確実な観察と写生で培われたものであり、それこそが応挙が京都の人たちに支持された理由だった。そして応挙の下には多くの門人が集まった。応挙は18世紀後半の京都画壇の人気ナンバーワン絵師だったのである。

上方画壇に注目した企画展「上方界隈(かいわい)、絵師済々1」が、大阪市の中之島香雪美術館で開催中。2月2日までの前期では円山応挙ら京都画壇、2月4日から3月15日までの後期では大坂画壇に注目する。

(大阪芸術大学教授 五十嵐 公一)

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

関連トピック

トピックをフォローすると、新着情報のチェックやまとめ読みがしやすくなります。

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

暮らし

新着

注目

ビジネス

暮らし

新着

注目

ビジネス

暮らし

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン