京都の劇団MONO30周年 土田英生代表に聞く
文化の風

2020/1/24 2:01
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俳優として毎回のように舞台にも上がる土田(中)(2019年上演の「はなにら」)=谷古宇 正彦撮影

俳優として毎回のように舞台にも上がる土田(中)(2019年上演の「はなにら」)=谷古宇 正彦撮影

京都の劇団MONOが結成30周年を迎え、代表作に新たな短編を加えた「その鉄塔に男たちはいるという+(プラス)」を上演する。ほぼ全作品の作・演出を手掛けてきた劇団代表の土田英生にこれまでの歩みを振り返ってもらいつつ、今後の展望などを聞いた。

■MONOの作品は多くが現実の世界から少しずれた設定の中で生きる人間を描く。派手な展開はなくとも巧みな会話から笑いが生まれ、どこか悲哀がにじむ。

「共通するのは全員が脇役のドラマであること。『社会派』とも『お笑い』ともくくられるのは嫌で、コメディーとコメディーでない境界にあるものを作りたいと思ってきた。現実から出発した題材も1つフィルターをはさんで空想の世界を作ることでより普遍的な作品になる。MONOの戯曲は毎月2、3本は日本のどこかで上演されている。普遍的な作品を残せた証しかなとうれしく思う」

■一昨年、新メンバーとして20~30代の男女4人が加わった。

「ここ15年は男5人だけでやってきて年齢も40代後半から50代になったので、なかなか新しいことは始まらない。劇団としてこの先も長く続けていくためには新しいものを積み上げていかなければと考えた。全員脇役の芝居だから、俳優には個人の工夫ではなく、場・空間に奉仕する演技を求めている。全体の中でパーツとして動くことで、MONOの『アンサンブル』が生まれているのだと思う」

■昨夏にはイキウメの前川知大、iakuの横山拓也ら個性的な作風でならす面々が脚本を提供した6本の短編「涙目コント」を上演した。

「30周年ということで毎年恒例の新作公演のほか、新メンバーだけの公演にも挑戦した。『涙目コント』をやってわかったのは、他の人の台本でもMONOがやればMONOになること。自信になったので今後は(これまで避けていた)派手なエンターテインメントもやってみたい」

■2月13日からアイホール(兵庫県伊丹市)で上演する「その鉄塔に男たちはいるという+」は自衛隊の慰問に来たグループが戦地から逃げ出し、戦争終結まで隠れていようとするが……というオリジナルストーリー。1998年の初演と同じ配役で演じ、新メンバーが新作部分に登場する。

「当時は日本がまた戦争を始めたら自分たちはどうなるかと想像したファンタジーだった。20年たって日本社会は作品内で想定していた戦時の状況を追い抜いてしまったと感じる。だから今上演するとこの作品が現在の政治への意見表明と受け止められてしまう。それは嫌だが、もうファンタジーとしても描けない。どう現実と地続きなものにするか考えた」

「直接政治にコミットしないと『現実から逃げている』と言われることもある。ただ、アートは政治による分断を埋め、橋を渡す言葉を考える仕事。政治的な行動を『しなきゃいけない』と『しなくていいよ』のどちらでもない(政治に対する)声の上げ方があるはず。そんな思いで演出した」

■京都を拠点に30年活動を続けてきた。

「(マキノノゾミ、松田正隆、鈴江俊郎ら)尊敬する上の世代が京都から出て行ってしまったことへの、意地もあったかも(笑)。京都と言うと東京の人もけむにまけるような独特のオルタナティブな(主流とは別の)立ち位置でいられる。だから、改めて『京都の芝居』を打ち出す企画公演をしたいと、周囲に声をかけ始めている。上の世代はまだまだ活躍しているし、下の世代にもヨーロッパ企画とか元気な劇団がいる。若い世代も続いてほしいと思っている」(佐藤洋輔)

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