ドコモ、5G技術を展示 3200超の企業・自治体と協業

NTTドコモは23日、次世代通信規格「5G」の技術・サービスなどの展示会「ドコモ オープンハウス2020」を東京ビッグサイト(東京・江東)で開いた。5Gの商用化を今春に控え、3200超の企業・自治体と協業するなど産業向けのサービス開発を進める。一方、個人向けでは今春から楽しめる専用コンテンツは少なく、消費者に5Gをどれほど浸透できるかが今後注目される。

ドコモの吉沢和弘社長は23日午前、展示会の講演で「5Gで日本は世界で遅れていると言われているが、どのような価値を提供できるかが重要だ。開始と同時にサービスやソリューションを立ち上げていきたい」と話した。
「ドコモ オープンハウス」は2009年度に始まり、今年で11回目を迎える。今回は約270の技術やサービスを展示。イスラエルのスタートアップと研究を進める6分でフル充電が可能だというスマートフォン電池などを公開した。なかでも5G関連の展示に会場の約半分のスペースをさいた。
法人向けでは、コマツと組んで280キロメートル離れた中部国際空港(愛知県常滑市)内のショベルカーを遠隔操作する様子などを公開した。5Gでは情報をやり取りする際に生じる遅れが少なくなることから、遠隔医療などへの利用が見込まれている。ドコモが5Gで協業する企業・自治体は19年4月と比べて4割近く増えた。
個人向けのサービスでは、音楽イベントなどを仮想現実(VR)と高精細の8K画質を組み合わせて映像配信するサービスを3月に始める。音楽イベントなどの放送を想定。5Gの高速大容量という特長を生かし、自宅などでもライブ会場の最前列にいるかのような臨場感を楽しめるという。
ただ、通信大手幹部は「5Gの個人向けサービスが広がるには3年程度かかるだろう」と指摘する。5Gは電波の届く範囲が狭いため、基地局の整備に時間がかかる。利用者の負担の軽減も課題で、5G端末はサービス当初は10万円近い高価格帯が中心となる見込みだ。通信料金についても携帯電話大手3社は未発表だが、4Gの大容量プランがベースになるとみられる。
負担に見合うサービスがそろわなければ、5Gの利用者は増えにくく、5Gに対応した専用コンテンツの普及が進まない可能性もある。
5Gの商用サービスはKDDIとソフトバンクが3月末までに始める方針だ。ドコモは開始日を明らかにしていないが、今春に始めるとしている。あらゆるモノがネットにつながる「IoT」など産業向けに加えて、個人向けサービスの魅力を打ち出していくことが求められる。
(今井拓也)