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「大人のマスク氏」安定感 テスラ時価総額がVW逆転

米電気自動車(EV)メーカー、テスラの株価上昇が続いている。時価総額は22日終値で1026億ドル(約11兆2400億円)となり、独フォルクスワーゲン(VW)を超え自動車メーカーでトヨタ自動車に次ぐ世界2位になった。市場関係者はテスラをハイテク銘柄ととらえ、VWなどとは異なる視点で評価されている面もある。

「彼は非常にいい仕事をしているよ」。米トランプ大統領は22日、米CNBCとのインタビューでテスラ最高経営責任者(CEO)のイーロン・マスク氏を持ち上げてみせた。マスク氏が率いる米宇宙開発ベンチャーのスペースXが開発した再利用可能なロケットに強い印象を受けたといい、「彼のような天才を大事にしたい」と賛辞を惜しまなかった。

18年夏にテスラの株式非公開化の計画を突如としてツイッター上で表明するなど、これまで数多くの問題発言で物議を醸してきたマスク氏だが、ここに来て起業家としての評価は安定してきた。情報開示のあり方を問題視した米証券当局との合意に沿って、現在はツイッター上での重要な経営情報の発信は控えるようになった。

事業でも成長軌道がみえてきた。19年7~9月期決算では市場の事前予想を覆し、1億4300万ドルの最終利益を計上した。黒字は3四半期ぶりだ。決算に合わせ、中国・上海市で建設中だったEV新工場が着工から約10カ月で稼働にこぎ着けたことも発表した。生産計画の未達を繰り返してきたテスラの印象を大きく様変わりさせるきっかけになった。

主力小型車「モデル3」を北米以外の市場に輸出し始めたことで、19年の世界販売台数は36万7500台と18年の1.5倍に増えた。期初に示した36万~40万台という目標を達成した格好だ。上海に続き、21年には独ベルリン郊外で欧州初となる工場を稼働させる計画で、今後も生産と販売の伸びが加速するとの期待感がある。

テスラは自動車を巡る次世代技術「CASE」のうち、EV以外の分野でも先頭集団にある。高速道路など一定の条件下での自動運転機能は既に実現させた。最新のEVには、運転手が不要になる完全自動運転に必要な半導体を搭載しているという。将来、ソフトウエアを更新すれば市街地での複雑な自動運転もできるようになるとの説明だ。

ただ、テスラ株の上昇はこうした技術革新の潜在力だけを評価したものではない。

「テスラはEVだから売れているんじゃない。マスクの会社だから売れているんだ」――。ある取引先企業の幹部は同社の競争力をこう説明する。石油依存社会からの脱却を掲げ、人類の火星移住を目指すマスク氏の壮大な構想に共感する消費者は多い。同氏の存在がテスラのブランド力の源泉であり、市場関係者がテスラ株をハイテク銘柄に位置づける根拠にもなっている。

VWの新車販売台数は世界トップで、テスラと比べると約30倍だ。それでもVWは危機感を隠さない。ヘルベルト・ディース社長は16日、幹部を集めたスピーチで「伝統的な自動車会社の時代は終わった。VWの未来はデジタルテックにしかない」と強調した。携帯電話でノキアが衰退してアップルが台頭した例まで持ち出して意識改革を促した。

時価総額でVWを抜いたテスラも、自動車メーカーで世界トップのトヨタと比べるとなお半分以下だ。トヨタの新車販売台数はVWに及ばないが、利益水準でライバルを圧倒している。19年度の連結純利益は2兆1500億円の見通しで、VWの1兆7000億円強(市場予測)を大きく上回る。

稼ぐ力と株価のバランスを示す予想PER(株価収益率)はトヨタが10倍、VWは6倍なのに対し、テスラは80倍程度だ。利益水準が低いにもかかわらず極めて高い株価になっていることが分かる。米モルガン・スタンレーのアダム・ジョナス氏は「短期的な勢いは非常に強いが、最終的な持続可能性には疑問がある」と指摘する。

株価の上昇基調が続く1月中旬時点でもテスラ株の将来の値下がりを見込んだ空売りの動きは続いており、信用取引の残高は時価総額の15%前後に達しているもよう。テスラの株高に対する懐疑的な見方が払拭されたわけではない。テスラが29日に予定する19年10~12月期決算に合わせて説明する20年の販売計画などに関心が集まる。

(シリコンバレー=白石武志)

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