栃木の中小支援、金融機関と公認会計士協会が連携
事業承継や創業などで中小企業や新興企業を支援しようと、栃木県内の関係機関が連携を強めている。金融機関と公認会計士協会が会計士の紹介などで協力するほか、信用保証協会と事業引継ぎ支援センターも連携体制を整えた。経営者の高齢化や後継者難を背景に「大廃業時代」が迫るなか、地域経済の活力を維持するため、支援を手厚くする。

日本公認会計士協会東京会は23日、県内の全10金融機関などと連携推進の覚書を結んだ。中小企業に対するコンサルティング機能の向上などにつなげる。
金融機関は支援が必要な取引先企業に公認会計士を紹介するよう会計士協会に要請するなどして、企業が抱える課題の解決に連携して取り組む。事業承継や創業、経営再建、組織再編など各種課題の解決に最適な会計士を選定・紹介することで、迅速に対応する。
事業承継に伴う企業価値の算定など公認会計士のノウハウが求められるケースは少なくない。日本公認会計士協会東京会の峯岸芳幸会長は「経営改善や中長期の経営計画などの策定で力添えできるのではないか」と話す。これまで同様の覚書の締結は南関東を中心に進んできたが、栃木県はなかった。足利銀行の松下正直頭取は「公認会計士との連携がさらに広がっていくのではないか」と期待する。
他地域に先駆けた連携体制も構築した。同県の信用保証協会と事業引継ぎ支援センターが2019年秋に始めた「とちぎ経営資源引継ぎ支援事業」は現在、8案件に取り組んでいる。このうち1件は従業員による事業承継が決まり、代表者の交代も終えた。
事業承継のほか、既存の経営資源を引き継いだ創業の仕組みも用意している。同協会と同センターのネットワークを生かし、後継者不在の企業や引き継ぎ候補者などの情報を集めて仲介。事業承継計画の策定支援や保証料率の引き下げなど、相互の強みを持ち寄ってサポートする。
19年9月末時点で県信用保証協会の保証制度を利用していた約2万事業者のうち、約4割は代表者が60歳以上。さらにこのうち5割近くが後継者が不在または未定だった。同協会は「支援機関が動き、後継者に安心感を与えることが重要だ」とし、支援に力を入れていく考えだ。

金融機関や信用保証協会、公認会計士などの専門家にとっても、地域経済の縮小は収益減につながる。企業の多様なニーズに応え、廃業を防ぐ迅速・柔軟な取り組みが求められている。