Google、ネット広告の新技術 データ保護・利便性両立
米グーグルは、ネット広告などを支える新技術の開発を進める。ネット利用者のプライバシーを重視する。同社はブラウザー(閲覧ソフト)最大手で、ネット広告企業といった第三者がサイト閲覧履歴などを利用する仕組みの「サードパーティー・クッキー」を段階的に制限する方針を打ち出した。急拡大したネット広告業界で利用者の安心と利便性の両立を目指す動きが広がってきた。
新しい技術の開発は同社のブラウザー「クローム」の機能の見直しに伴う措置で、2022年までの実用化を目指す。データ保護と広告配信を両立させる新技術となる見通し。協力する企業とともに広告効果を測定するなどの実験を、年内に行う構想もある。

現在は個人ユーザーがクロームを使ってネットを閲覧した場合、外部の広告企業などの第三者がサードパーティー・クッキーの仕組みを通じ、ユーザーがどのサイトを訪れたかといった履歴情報を得ることができる。
多くの広告会社は、サードパーティー・クッキーを使って集めたデータをもとに個人の趣味や嗜好を分析し、「ターゲティング(狙う)広告」の配信につなげる。個人の関心に合わせて効果的に広告を打てることから急成長し、10兆円を超える産業に育った。
だがターゲティング広告を巡っては、個人情報保護の視点から懸念が高まっている。本人が気づかないうちに企業にデータが分析され、病歴や宗教など知られたくない情報までたどられかねないとの見方もある。欧州が先行する形で個人情報の保護を目指した規制強化が広がっている。
グーグルはブラウザーで6割超の世界シェアを握る最大手だ。クロームの開発担当者、ジャスティン・シュー氏は「ユーザーがプライバシー保護を求める流れは強まっている」とし、こうした機能を22年までに段階的に止めることを公表した。
同社の新たな方針によって、ターゲティング広告の配信に関連したプライバシー侵害の問題は減る可能性がある。一方で、ネットビジネスは広告を活用した無料モデルが支えており、こうした好循環が崩れるとの可能性も指摘されている。
グーグルは広告会社やデータ分析会社などからも幅広く意見を集めながら、今回の取り組みを進めるとしている。データ管理サービス「データサイン」(東京・港)の太田祐一社長は「時間をかけてネット広告関連企業との関係を健全に変えようとする姿勢は好ましい」と話す。
米アップルなどは既にブラウザーの機能を見直し、サードパーティー・クッキーを使ったネット広告会社などによるデータ収集を制限している。